『抜本-BAPPON-』制作記 自主制作映画

初めての屋外アクションシーン撮影!無常なる日照時間|連載No.8

2016年2月6日

キャプチャ

これまでいくつか自主制作映画(インディーフィルム・インディーズムービー)を撮ってきた私ですが、圧倒的に思い入れの深い自主映画があります。

それが、『抜本-BAPPON-』です。以下、『抜本-BAPPON-』の簡単な紹介なので、知っている方は読み飛ばしてください。

『抜本-BAPPON-』概要

演出の例 抜本-BAPPON-

制作期間2年、上映時間90分の大作自主制作アクション映画。一人もプロがいない中、限りなく0に近い予算を駆使し、工夫と努力で壮大な世界観を描くことにチャレンジした意欲作。

本作最大の特徴は、本で戦うアクションシーン。少子化による滅亡の危機に瀕した日本を、『抜本的少子化対策』という本の力を使って(物理的になぐったり盾にしたりして)救っていく青年の物語である。序盤はナンセンスでバカなギャグアクション風で始まるが、徐々に本で戦う様子が真剣なものに見えてくるのが面白い仕掛け。

また、撮りながら学んでいった面も大きいため、特に物語終盤にかけて映像技術、編集技術、エフェクト、演技、脚本、世界観含め、全てがクライマックスに向けて一気に怒涛の盛り上がりを見せる。その様は、商業映画ではあり得ない異様な雰囲気がある。

・コメント
90分と長いが、全編見た人からの感想は「もう一回見たくなる」といったものが多い。ただ、パパッと序盤だけ見てやめる人からの評価はあまり高くない。本当は全編通しで見てほしいが、ちょっとだけ見るつもりならネタバレ覚悟で後半30分を見ていただきたい。

 

そんな『抜本-BAPPON-』の制作記も今回で第8弾!

今回は初の屋外撮影の回となります…。前回までの制作記もよければご覧ください。


 

初の屋外撮影は新鮮でそして大変だった

前置きが長くなりましたが、前回の制作記で、屋内でのクライマックスシーンを途中まで撮ったところまで話しました。

このときの撮影は無知ゆえに大量シーンの一気撮りを試みていましたが、当時は冬で日照時間も短いわけです。無情にも外はそろそろ暗くなろうか…という時間に差し掛かってしまい、急遽屋内撮影を中断し、屋外撮影に踏み切ったわけです。

ってなわけで外に繰り出します。

外に繰り出す我ら

ストーリーの流れ的にどうしても自動販売機が必要なため、まずは自動販売機がある場所を探します。「どうにかなるっしょ」と思ってたのでロケ地探しからスタートなのです。

やはり、予想通り自動販売機くらいならそこかしこにあります。しかし、意外と人通りが多くて撮影には適さないところが多い!政府も自主映画撮影を考えた上で都市計画を立ててくれてはいないようです。ああ無常。

 

しかしまあ、人通りがまあまあ少なければ、1カットごとに人がいなくなるのを待ってパパッと撮るのを繰り返せばいけるので、その作戦でいくことになりました。ちなみに当時は低予算の極みだったため、三脚すら持っていませんでした。代わりに余った役者がカメラマンとなるので、人が来たらすぐどくことも可能な万全態勢です。すばらしい!

ってなわけで、少ししてやっと撮れそうな場所を見つけました。

ちょうどいい自動販売機発見

キャプチャ

ありました。

無駄に何個も並んじゃってますが、さほど人通りも多くないのでここにしちゃいます!

キャプチャ

ちょうどよく隠れる壁もあるので絵コンテ通りに撮れます。

そしてなによりも画像からも見て取れるように、すでに夕方です! これ以上粘って探していたら役者の日程を合わせるのがむずいので撮るしかないのです!

 

てなわけで撮影開始

今回撮るのは、クライマックスではなくて、むしろ序盤のシーンです。序盤程おバカアクションになっているので、ここは撮影してても周りの目がなかなか恥ずかしいです。

もっとめちゃくちゃアホな設定にしてたら逆に恥ずかしくなかっただろうか…などと思いつつ撮影。

日本の少子化を救う力を持った『抜本的少子化対策』という本を狙う、謎の組織の刺客とのアクションバトルシーンです。今回はいかにもザコ臭がする刺客です。

絵コンテ時点では当初、ナイフで戦うのを考えていたのですが、ナイフ的な小道具の仕入れが間に合わないことが判明したため、「十手」で戦う設定に変更した経緯があります。今思うと十手にしたのは正解でした。こっちの方がザコ臭いしキャラが立ちます。

キャプチャ

今回のアクションシーンはお互い両手武器…というコンセプトがあります。

主人公は本で戦うのが基本ですが、ここでは本以外にもう一つ武器を使います。

それは…

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自動販売機から出てくる…

キャプチャ

青色の…(通行人の目線が気になる)

 

キャプチャ

缶コーヒーでした~

 

具体的な戦い方は見てのお楽しみということで…。

上の画像、実はこれも何気ないシーンに見えてロケ現場の状況に応じて追加された展開であります。ほんと、色々予定通りにいかないっす。

これは何かというと、思ったより自動販売機の付近に人が多かったので急遽場面移動するシーンを加えたわけです。加えたといっても、アクションからの流れで敵を追いかける主人公(享太)を撮っただけですが。

…が、これがなかったら下手したら撮り切らなかったと思われるので英断といえなくもなかったです。事前の準備が悪いといえばそれまでです。

そしてロケ地移動後…

微妙に通りを奥に進んだだけで一気に人通りが減ったので、非常に撮りやすくなりました。

しかし、もはや夜は目前でした。急いで撮りはしたものの、あるカットを境に突然暗くなってしまうことに…。カラコレ(色調補正)でごまかすものの、完全にはごまかしきれないレベルになってしまいました。

色調比較

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↑カラコレ前

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↑カラコレで夜っぽくした後

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↑カラコレ前だけど普通に夜になっちゃったカット

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↑カラコレで少し明るくした後

 

…けっこう無理がありますよね。

ただ、ちょうど区切りとなるカットで急に暗くなったので、ギリギリ「演出かな?」と思える流れにはなったかなあ、とは思います。きわどいですが、一連の流れで見ると、まあ許容できると思います。多分。

ちなみに、カラコレやら色調補正やらは当時はAviutlという無料ソフトでやっていました。

 

ですが、とにかくなんとか十手男とのアクションシーンは撮り切ることができたというわけです。十手男の出演シーンはもうないので、これで役者(知人だけど)にもう一度来てもらう必要はなくなりました。

 

夜になってしまい…

とはいうものの、この十手男を倒した後にはもう完全に真っ暗になってしまい、このままだと当初の予定通りには次のシーンに繋がらなくなってしまいました。

…が。脚本の大枠や重要シーンは作りこみ済みだったものの、中間のアクション部分や展開部分はまだ作り途中だったので、もはや思い切ってストーリー展開を少し変えることにしました。

プロであればあり得ないことかも知れませんが、「絶対に完成させる」というところは譲れなかったので、素人が最初に作った脚本が完璧なはずもないので、どうせならこれを機に脚本を再度練るのも悪くないと思った次第です。

というわけで、夜になったことを利用して、ストーリー上重要となる父親を振り返るシーンが挿入されたりすることとなりました。これもプラスに働いたと思います。

…が、この日は実はまだ撮影が残っていたので、その挿入ストーリーを実際に考えたのは後日のことでした。

残る撮影を終わらせるために

私たちはクライマックスシーンの屋内ロケ地へとそそくさと戻ることとなりました。

そう、この日はまだ撮影が残っていたのですから…。

そして、この時間のない撮影が結果的には非常に作品を良い方向にもっていくきっかけとなったのはまた今度のお話し。

というわけで、まあまあ長く書きましたので、続きはまた次回!

 

そして…

本編

本編は当ブログのムービーページで公開してはいるのですが、制作記記事にも載せていいかな~と思い始めたので、試しに載せることにします。

序盤は粗いところも多いですが、脱力アクション的にはその粗さも味とさせてください。全編通しで見ると、序盤の粗さもいい効果になっているはずです…。信じられなければ、飛ばしていきなり終盤をチラ見してもいいかも?


動画は長いので3分割されています。中盤・終盤が気になる方は『抜本-BAPPON-』の特集ページからどうぞ!
それではまた次回の制作記でお会いしましょう! 私はサラダを崇拝しながら寝ることとします!じゃあね。