クラシック 作曲・音楽制作 音楽紹介

【作曲講座】メロディーにモチーフを!曲を印象付けるコツ

2015年8月4日

 

こんにちは。映画撮ったり作曲したりの管理人、紅葉葉 秀秀逸です。

さて、このブログでは映像編集や作曲について主に書いていますが、今回は作曲テクニックの一つ、「モチーフの使い方」についての記事です。ゲームや映画、クラシックでの使用例を交えつつ説明します。

本格的に作曲を理論から教えるのはほかのサイトにゆずるとして、このブログでは実例を交えつつ、感覚的に伝えていきます。また、「作曲って面白い!」となるように解説していきます。

ちなみに、作曲理論が学べるサイトをこちらの記事で紹介してますので、よかったらどうぞ。

 

それでは本題に入ります!


作曲におけるモチーフとは

モチーフで作曲をしよう! と言っても、モチーフがなんだか分からなければどうしようもありません。

なので、まずはモチーフについて簡単に説明します。

そしてそんなときに決まって使われるのが…

運命です。

 

この曲は冒頭でいきなり「ダダダーン」と鳴りますが、その「ダダダーン」こそが「モチーフ」なのです。

運命では、「ダダダーン」というモチーフが形を変え、なんと300回以上も使われています。
「そんなに使われてるか!?」と思うかも知れませんが、そこがミソです。

なにも「ダダダーン」がそのまま300回以上も使われているわけではありません。「形を変え」と書いたとおり、「ダダダーン」というモチーフが様々な風に形を変えて使われているのです。

モチーフの展開

「ダダダーン」は音符にすると「ソソソミ♭ー」ですが、これをそのまま300回も使ったら飽きてしまいます(前衛音楽ではあるかも?)。

「ダダダーン」というモチーフのアイデンティティは、「同じ音を同じ速さで三回鳴らし、四回目の音が少しはなれた高さで鳴る」ことです。

これを守れば、「ソソソミ♭ー」が「ソソソドー」や「ソソソシー」になっても大元のモチーフは連想されます。
更に言うと、最後の音を伸ばさずに、「ソソソミ♭ラララファシシシソ」というように畳み掛けてもよいのです。

そうしてモチーフの変化に慣れてきたところで、次は三回目の音の高さも少し変えたりしてみるのです。「ソソファミ♭ー」といった具合にです。
別に反則ではありません。このようにモチーフを展開することで、メロディーが広がり、曲が広がっていくのです。

実際、先ほどの「運命」を聴けばそのような流れになっていることが分かると思います。

 

なぜモチーフを使うのか?

これでモチーフについてはわかってきたかと思います。ですが、そもそも何故「モチーフ」なんかを使って作曲をするのでしょうか?
変な縛りを付けるよりも自由に作曲したほうがいいではないか! と思う方もいると思います。

なので、モチーフがもたらす効果をここにまとめます。

1、曲に統一感が出る

一つのモチーフを元に曲を作るので、曲全体に統一感が出ます。少なくとも、でたらめではないということです。絵でも、「丸という図形を基本とした絵」などを見ると統一感を覚えると思います。

2、曲の続きに困らない

モチーフがあると、作曲に詰まった時でも、モチーフを元に次の展開を作りやすいです。「さあ、自由に遊びなさい!」と急に芝生に投げ出されても、人間は意外とどうすれば良いかわからないものですが、芝生に白線とゴールがあればなんとなくすることが見えてきます。
それがいいことかどうかはともかく、モチーフは曲作りを助けてくれます。

3、モチーフの変化を楽しめる

モチーフが様々な形に変化していくさまは、もはやそれだけで面白いです。運命なんかを聴いていると、やはり「すごいな~」と感心してしまいます。「掛けことばでうまいことを言われた」的な面白さすらあるように私は思います。

4、特徴あるモチーフでキャラクターなどを表せる

これは運命ではちょっと感じ取れないことですが、映画音楽やゲーム音楽ではよく使われる手法です。テーマ曲をぎゅっと凝縮したような感じでモチーフが扱われる、と言えばわかりやすいでしょうか。

説明のために、まずドラクエで例を出します。(ネタバレです)

鳥のモチーフ

ドラクエ8では後半で「不死鳥レティス」という鳥が出てきます。その鳥のテーマ曲が「おおぞらをとぶ」という雄大で非常に良い曲なのですが、ラスボス戦ではその曲が形を変えて緊迫感ある様子で登場するのです。
(曲は著作権の関係でアップできないので、ちょい無責任ですが個々人で聴いてみてください。鳥。)

不死鳥に乗ってラスボスと戦う、というシーンなのですが、それを音楽でも表しているというわけです。「おおぞらをとぶ」のメロディーの出だしをモチーフにしてラスボス戦の曲「おおぞらに戦う」に取り入れているのです。(もっとも、途中からは「おおぞらにとぶ」の編曲のようになりますが…)

少し分かりにくいですが、長いメロディーの伴奏や楽器を変えるような場合は、モチーフを変形させるとは言わず、編曲・アレンジというような扱いになります、モチーフはメロディーを作る要素の一つ、といったイメージです。モチーフを組み合わせてメロディーを作るわけです。
ざっくり言うと、モチーフは短いです。2~3音でもモチーフは作れます。

 

ほか、クラシックでもキャラクター的にモチーフを使っている曲はあります。

動物の謝肉祭が比較的わかりやすいでしょう。


様々な動物をモチーフで表しています。 楽器の音色もよりモチーフの特徴が際立つような選び方がなされています。
→解説サイト<ブラボー、クラシック音楽!-曲目解説#4>

映画音楽ではスターウォーズやハリーポッターがわかりやすいので、ぜひ色々聴いてみてください。

 

モチーフで印象付ける

このように、モチーフを使うと色々といいことがあるのです。
曲に統一感を持たせたり、特徴を持たせたりできるのがモチーフなのです。

ここからは『抜本-BAPPON-』という、自主アクション映画用に私が作った曲を用いて、印象深いモチーフの使い方を紹介します。モチーフは、ゲームや映画のように、特徴的なキャラや場面があるものには非常に効果を示します。
→『抜本-BAPPON-』の紹介記事はこちら

長い映画でずっと違うメロディーが流れていても全然覚えられないですが、「悲しい場面はこのモチーフ」「Aというキャラにはこのモチーフ」のようにすると印象深くすることができます。
なおかつ、「悲しい場面にAというキャラが出る」というときなんかは二つのモチーフを組み合わせたりもできます。

その辺がよく伝わる曲を、実際の映画の場面を通して紹介します。

 

モチーフの元となる曲

まずはモチーフの大元となるテーマ曲を紹介します。
これを全部じゃなくても良いので、20秒くらいまで聴いてみてください。

「それでも拙者は征くのでござる」

これは変わった曲名ですが、主人公の先祖が現れる場面で流れる曲です。いうなれば、先祖のテーマ曲です。
このテーマ曲の一部、特徴的な部分を切り取って、モチーフとして他の曲に使っています。

この曲は映画『抜本-BAPPON-』では下記の場面(9分50秒辺り)で使用されています。

先祖のシーンですね。この曲は先祖が戦うようなシーンで流れます。

 

「先祖の誓い」

これとは別に、『抜本-BAPPON-』にはもう一つ先祖の曲があります。こちらは、先祖の霊的なものが現れるときに流れる曲です。
そしてその曲の一部に、「それでも拙者は征くのでござる」のモチーフが登場します。場面は違えど、先祖の曲に統一感を持たせたわけです。

先祖の霊が登場するときの曲。45秒辺りから「それでも拙者は征くのでござる」のモチーフが流れます。また、音色でも互いの曲に関連性を出しています。

この曲は映画『抜本-BAPPON-』では下記の場面(5分50秒辺り)で使用されています。

先祖の霊登場!? という場面なので、ちょっと不思議な雰囲気にしています。

 

「先祖は蘇り、戦う」

そして、先祖の力を借りて戦うクライマックスの曲がこちら。

最初は「それでも拙者は征くのでござる」で始まり、途中から曲が様子を変え緊迫した空気になり、「先祖の誓い」のモチーフを使い(50秒辺りから)クライマックスに向けて一気に盛り上がる流れになっています。
実はこの曲には、更にほかのテーマ曲のモチーフも取り入れているのですが、ここではその説明は省きます。

また、「先祖の誓い」のモチーフを「それでも拙者は征くのでござる」のメロディーを奏でていた楽器で演奏することで、両方の曲と場面を連想するようにしています。

この曲は映画『抜本-BAPPON-』では下記の場面(21分50秒辺り)で使用されています。

場面にふさわしい盛り上がり。

 

「蘇る決着の日」

先祖の力を借りた戦いが終わり、先祖の力が消えてしまうシーンの曲です。
終わりを感じさせる切なさと、神秘的な雰囲気を持った曲です。

「それでも拙者は往くのでござる」のモチーフがイントロで少し切なくも終わりを感じさせるように短く流れ、その後は「先祖の誓い」がゆっくりと形を変えて流れます。

この曲は映画『抜本-BAPPON-』では下記の場面(25分20秒辺り)で使用されています。

「どんな映画やねん」と思うかも知れませんが、戦いが終わり、先祖の力がなくなった場面に相応しい、切なく神秘的な仕上がりになっています。

 

まとめ

これで、自主制作映画『抜本-BAPPON-』を通した「先祖の曲」のモチーフ紹介は終わりです。

ほかにも色々な登場人物や場面にモチーフをふんだんに使って作曲をしました。
モチーフなしで映画の曲を丸ごと作るのは大変だ、というのもありますが、やはり印象作りにはモチーフは非常に効果的なのです。

実際のところ、上に挙げた「先祖の曲」は、映画の場面と共に印象に残ったのではないでしょうか? これらの曲が全てまったく関連の無いメロディーであれば、きっと曲は印象に残らないし、盛り上がりにも欠けかねないように思います。映画の本分はストーリーですが、音楽も重要なので、モチーフをうまく使うこともまた重要だと思います。

モチーフを会得しよう

モチーフは肌で覚えるのも大切だと思います。なので、スターウォーズやハリーポッターなどの特徴的なテーマ曲の多い映画音楽を聴いたり、ドラクエやマリオ・ゼルダなどのゲーム音楽でメロディーを構成する短いモチーフを見つけたり、運命などのクラシックで様々なモチーフの展開を知ったりするとよいと思います。

あとは、『抜本-BAPPON-』を見たりもよいことでしょう。ええ。

実際、私の曲はけっこうモチーフの使い方がわかりやすいですが、とは言ってもまずは偉大な作曲家達の曲からモチーフを読み取れるようになると面白いと思います。たとえばドラクエでいえば、ドラクエ6の「敢然と立ち向かう」なんかは、ほぼモチーフだけで曲ができているので面白いですよ。

それでは皆さん、モチーフな日々を過ごしましょう!

 

ちなみに、書籍でモチーフや編曲について学びたい!というう方は以下の本がお勧めです。スターウォーズなどの楽譜を例に出して、オーケストレーションや編曲知識について学ぶことができます。私も実際に買っています。