変な検閲やら、センスのない上層部、邪魔でしかない商売目線のクライアント意向などがない個人の制作ゲームはやはり、ときに鋭く光る。
世界観・設定をとことん練れるのはもちろん、ストーリーをどんなに突飛にしようと勝手だし、納得いくまで作りこめる。
…そんなわけで、ここでは誰に作れと言われたわけでもなく作られた、RPGツクールによって作られた名作フリーゲーム達を紹介しよう。フリーゲームに精通してるわけではないので、超王道どこの紹介になるが、王道は知っておいたほうが良いものだ。
未クリアなものや、そもそもクリアという概念がはっきりしなゲームもあるが、やって損はないどころか、やれば長く記憶にゲームばかり。創作好きの私としては刺激も受けられて一石二鳥である。
ではどうぞ!
RPGツクール名作フリーゲーム4選
名作を4つ紹介するが、どれも非常に手の込んだゲームである。実況動画も載せているので、興味が出た方はぜひやってみて欲しい。
高難易度・芸術的空気感「魔王物語物語」(通称”まもも”)
- RPGツクールXP
- プレイ時間:全滅多すぎて測定不能だが、30~50時間程度?
通称「まもも」。なめたかわいい名前なので、萌え系のほのぼのゲームかと思ったら大間違い。難解な小説のような、芸術的な空気をまとったゲームである。芸術といえば難解なイメージがあるかも知れないが、このゲームは難解だ。ストーリーと難易度が難解だ。システムはそこまででもない。
ストーリーは発見・発掘・開拓するもの
このゲームの発明として、まず、ストーリーで自由度を縛らないために、”ストーリーを絵本でのみ語る”という斬新なシステムがある。何度でも読み返せるし、これはこれでストーリーを発見していく感覚があり、面白いのだ。
こちらのブログの「フリーゲーム「魔王物語物語」をいまさらながらプレイした」という記事では「物語の開拓」と言ったりもしていた。やはりみんなそう思うのだ。物語を体験するのではなく、見つける。その感覚が新鮮だ。
ストーリーは20時間くらいやって難しくてクリアができずに諦めた私には理解し切れていないので、ここらでシステムの話に移る。とりあえずストーリーは、”神話×小説×詩÷3”を読んでる気分になるようなものだった、とだけ言っておこう。謎が多いので興味はすごく惹かれる。
一応、wikiからの引用で軽くストーリーを紹介しておく。
主人公のヒマリが「島」と呼ばれる地域を舞台に未完となっている『魔王物語』の結末を探すというストーリーのファンタジー作品である。住民の集まる洞窟「ネグラ」がゲーム進行の拠点となっており、プレイヤーは登場人物などから断片的に得られる情報を頼りに、ゲームの全体像を把握して行動範囲を広げてゆくことになる。
そういうことだ。
特徴的なシステム
特徴的なシステムの内、いくつかを紹介する。
まず一つが、「なんでも装備システム」だ。本当にどんなものも装備できる。アイテムによってはシュールな感じになるが、とにかくこれがあることで、何かアイテムを発見した時の喜びが大きい。探索の楽しさをぐっと上げてくれる。
次に、「ビンの数しか回復道具を持てないシステム」。フリーゲームにはありがちだが、回復手段が非常に貴重。難易度が高いのだ。しかし、難易度が高いと常に緊迫感があるので、シリアスなゲームと難易度の高さというのは非常に親和性が高い。回復の貴重さはサバイバル感も出るので、ゲーム全体のシビアな空気に深く影響するといえる。
最後に、これが最も特殊なのだが、「特殊なシンボルエンカウントシステム」がある。
敵がサルなのも気になるところだが、それは無視する。このゲームでは、シンボルエンカウントしてからバトル開始になるまでの間に、少しだけ自由に歩き回れる時間がある。この間にほかのシンボルに近づいて戦闘に巻き込んだり、エンカウントした敵との位置関係を調整したりすることができるのである。
そう、このゲームではクロノトリガーのように、敵との位置関係がバトルに影響するのだ。攻撃毎に攻撃範囲(角度)が定まっているので、敵を同じ方向に重ねて配置したまま戦闘に入れれば有利となるのだ。
…が、そもそも全体的に敵が強い上にこのゲームではなんと戦闘から「逃げる」という選択肢がないため、何をやっても危険なのも事実。この難易度の中、危険で広大なダンジョンを乗り越えてボスを倒し、新たな絵本を読めるようになりストーリーを発見していくというのは達成感がある。全体的に面白いのは間違いないが、コアゲーマー向きなのも間違いない。
高難易度名作RPGをやりたい方はプレイ必須だと思う。
実況動画
周回プレイしたくなる「シルフェイド幻想譚」
- RPGツクール2000
- プレイ時間:10時間程度
こちらはクリア済み。評判の通り、かなり面白かった。
あと15日で世界が破滅する…という状況でゲームは始まる。世界の破滅が迫るRPGは全く珍しくないどころか、むしろ世の中にRPGが出るたびに世界に破滅が迫るといえる。が、この「シルフェイド幻想譚」はそれをシステムに組み込んだ。そこが面白い。
1歩進むごとに時間が1分進み、宿屋での回復をしても時間が進む。そのほか、何をするにも着実に時間は進んでゆくのである。
その一度切りな感じのシステムが世界の破滅のひっ迫感を出して没入感が高くなるし、パズル的に頭を使うし、二週目以降もやりたくなるしで非常に良い。そして、15日で終わるので、プレイ時間がそんなに長くないのもいい。現実時間で言うと10時間程度で終わる。今からでもやってみるのがお勧め。
また、最初にお供のモンスター的なの(トーテム)を選ぶのだが、これもポケモン的な面白さがあってよい。愛着も沸く。次はあのトーテムにしてみたい、と思う。
このようにおなら要素もある。(違う。)
実況動画
今でも楽しい古き名作「イストワール」
- RPGツクール2000
- プレイ時間:20時間程度
先ほど「シルフェイド幻想譚」を大分持ち上げたあとだが、このゲームにも「シルフェイド幻想譚」に似た要素がある。というのも、世界崩壊までの制限時間システムがあるのである。システムの根幹部分が似ているとも言えるし、このシステムは否が応でもストーリーにも影響与えるので、どこか雰囲気も似て来る。
これとは別にまた「ネフェシエル」というゲームもあり、こちらがイストワールやシルフェイドに影響を与えているというのはよく出る話だが、イストワールとシルフェイドの間にもまた切っても切れない共通する空気感があるのは否定できない。単純にパクったとかそういうことではなく、個人がわざわざフリーゲームを作る”理由”や、目指す”方向性”などの作家性に関わる部分かなとも思う。
小難しいこと書いてよくわからなくなってきたのでゲームの話に戻る。まあ、簡単に言うと「ネフェシエル」は「イストワール」に影響を与え、「ネフェシエル」と「イストワール」は「シルフェイド幻想譚」に影響を与えただろう、ということだ。
では、システムの話。下の画像を見てほしい。
わざわざこの記事を読むような人はこの画面でわかると思うが、このように、制約の多い当時のRPGツクールでも、マップを使うことでスキルシステムを実現しているのである。つくづくアイディア&工夫&創作魂だなあ、と思う。言い訳せずにやりたい理想のゲームを実現しているのだ。すごい。
あまり深くは覚えていないのだが、幽霊・葬儀屋など特殊な仲間がいるのがまた面白い。
そして、ツクール2000の時代においてシンボルエンカウント。まあ、これはフリーゲームだと珍しくないが、ツクールの元のシステムではランダムエンカウントなので、ここもこだわりがわかる部分。
システムもストーリーもとにかくこだわるのがフリーゲーム…というわけだ。深くは覚えてないが、冒険する楽しみ、選択する面白さなどを存分に感じられ、ストーリーも良かった…という印象が残っている。今でもちょっと不便な程度で、十分遊べる内容なのでお勧め。
(「ネフェシエル」は大分古いのと、未プレイなのと、伝説ポジションということで今回の記事では紹介していない。)
実況動画
小ネタの数では敵なし「らんだむダンジョン」
- RPGツクールVX
- プレイ時間:100時間(やりこみ要素次第)
最後は「らんだむダンジョン」。タイトルからはトルネコの大冒険のように、入るたびに変わる複雑なランダムマップなダンジョンをクリアしていくゲーム…だと当然に思ってします。が、ちがう。
ダンジョンの数は数種類しかなく、そこには全然ランダム感はない。見たことのあるダンジョンばかりが出てくることになる。
…などと書くと一気に批判的だが、このゲームのランダムさはそこで感じるものではない!ということに、ゲームをプレイしていれば気づくだろう。このゲームのランダム感は、そのアイテムの多さ・それに付随する小ネタの多さ、これに尽きる。
2009年の時点でゲームについてくるテキストファイル内に
このゲームはわりとランダムなダンジョンを、
宝箱を漁ったり、強敵を倒したり、倒さなくてもいい強敵を倒したりしながら、
最深部まで辿り着いてボスの撃破を目指すゲームです。
武器防具はレアも含めて数百種類用意してあります。
と書いてあるので、その後追加されてさらに増えていると考えるとすごい。
いくつかネタアイテムを紹介する。まあ、ほとんどがネタなのだが。
パロディに、
ユーモア教訓話に、
歴史上の人物まで。
…というわけで。
ネタ的・パロディ的なアイテムの数の多さはほんとにすごいもので、一つ一つのアイテムの名前・説明文が面白い。説明文もゲーム的に役に立つかどうかよりもとにかくネタ要素が満載で、そこに命を懸けている感がある。ダンジョンに潜るたびに出てくる面白いアイテムやその説明文、ちょこちょこある小イベント的なネタ…これらがランダム感を生み出し、そして普通のRPGとは違う面白さを生んでいるのだ。
ネタ・パロディ満載に加え、登場キャラもアニメ的な女の子がほとんどで、とにかくポップ。明るく頭からっぽで楽しめる。しかし、小ネタはどれも秀逸かつ膨大。そんなゲームだ。
スマホゲーム的な面白さ・時代性へのマッチ
もう一歩分析してみると、個人的には、スマホゲームの先取り的な面白さだったと思う。ストーリーもあるが、ストーリーを気にしなくとも、刹那的に暇なときに起動してダンジョンに潜って面白いアイテムをゲットして小ネタを見て…とやっているだけで楽しめるわけだ。ガチャ的な面白さもあるし、現代で人気が出るにはこういうタイプのゲーム性が重要なんだな、と当時感心した覚えがある。
特に、ニコニコ動画での実況なんかには最適なゲームだと思う。
個人的にはストーリーや、体験感を重視するのでさほど好きなゲームではないが、いろいろと見習う点のあるゲームだった。一応ストーリー的なクリアは存在するようだが、私自身はそこにはあまり興味がなかったし、主眼はアイテムコレクションのやりこみ要素だと思う。
ほかの3作とはちがった、ポップな面白さが詰まったフリーゲームRPGが、「らんだむダンジョン」なのだ。
実況動画
ひとこと
以上、数々のセンスと実力と行動力にあふれる個人ゲーム作家達の名作紹介である。
いやー、個人が作るものはしょぼいものはひたすらしょぼいけど、凄いものはひたすら凄く、なおかつどこか尖ってるから記憶のどこかに刺さるなあ、とそう思う。
ゲーマー向けなので基本的にどれも難易度が高いので、面白いと思いつつクリアしていなかったりもするのだが、いずれのゲームも、ゲーム開始直後からそのゲーム独特の空気感というのは出ている。
とにかく、こういった一人で作られた素晴らしいゲームを見ていると、趣味で超少人数で映画を撮ってる私的にはがんばろう、という気にさせられる。役者が少ないのも撮影技術や合成、ストーリー、設定でうまく乗り越えてむしろ作品の長所にするくらいの勢いでやっているのだが、これからもやってやろうという気になる。
というわけで、私は映画の編集をするのでこの辺りでおさらば。
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