面白いゲームをやると、「自分だったらこうするのに」とか思って、オリジナルのゲームを考えたりしますよね。
それを実現したのが「RPGツクール」などのツクールシリーズです。RPG好きならかなりはまると思います。作るのは時間はかかりますが、作ってるとそんなことは忘れて気づいたら夜中…なんてのはざらでした。
…ですが、ここでは別にツクールの話をするわけではありません。
ゲームと同じように、面白い映画を見て感動すると「自分もこんな映画作れたらいいな~」なんて、おぼろげに思ったりしませんか?
でも、RPGツクールはあっても、映画ツクールなんてものはありません。一体どうやって映画なんて作るのか? がんばって脚本を書いたところで、それを映像化したらどうなるのか? 色々わからないことだらけだと思います。
ここでは、そんな人の少しでも役に立つように、先日完成した5分の短編自主制作映画『一人の怒れる釣り人』の脚本と、完成後の映像の両方を公開します。素人がやるからこそ「こんなレベルでもとりあえずこれくらいにはなるんだ」という自信に繋がると思います。
更に、より読みやすくなるように、脚本の随所に該当シーンのカットをスクリーンショットで入れ込んでいます。
この記事の狙い
まず断っておくのは、脚本の書き方も全くもって正しい形式ではないですし、ここには載せていませんが絵コンテも適当ですし、練習で作ったことも相まって完成映像も完璧ではありません。
なので、「プロのシナリオの書き方を学ぶ」とか、「名作を分析して映画の作り方を考える」とか、そういうのが趣旨ではありません。更に言うならば、自主制作映画サークルなどは対象にしていません。この記事は、私達のように協力者も少なく、機材もそろっていなく、お金もあまりない初心者のために書いています。
↓逆に、さっさとプロのシナリオを学びたい人はこういった本を読むのが早いでしょう。
ですが、ここでは映画制作においてキーとなる「文字が映像になるとどうなるか」を感覚と、「素人自主制作映画のリアル」は肌で感じてもらえると思います。
ちなみに
…ちなみに、脚本の書き方が適当とかいいましたが、この短編は私ではなく私の友人であり、このブログのゲストライターである三文享楽が書いています…。失礼な話ですが、本人も適当なのはわかっているので怒ることはないでしょう。
それでは! 作家でもある私の友人の書いた脚本を、そのままの形で公開します!
自主制作映画、インディーフィルム、インディームービー、自主映画…呼び名は色々ですが、とにかく役に立てば幸いなものです。
『釣り人(仮)』
脚本
川の風景をぐるり
釣りをしている青山、遠めで映す
ぼおっとした顔
あまり釣れていないのか、水色の箱を見ては無表情のまま釣竿の先に視点を戻す。
揺れることのない釣竿、何も入っていないバケツ、
そこへやってくるのは若者二人、
伊田「がはっはは、」
宇川「なあ、マジでだるいことばっかだよな」
軽く一瞥をくれながらも無視して釣竿を見る青山
伊田「俺はさ、できることなら何もしないで生きていきたいんだよ」
宇川「だよなあ。何かをやるのがめんどい」
無気力でうざい若者はあろうことか青山のちょい近くに来て立ち止まった。
話をしている。
青山は自分の近くで立ち止まった若者たちを確認。振り向いた状態でイヤそうな顔をして釣り竿の先に視点を戻す。
伊田「結局イヤなのは人間関係じゃね?」
宇川「ああ。俺さ、自分のことを棚にあげて人を怒るおっさんとかがマジで嫌いなんだよね」
青山の垂らした釣り糸の近くに魚がいるような雰囲気、うっすらとにやける青山の顔。水の下にいる魚
伊田「ああ、あいつらは俺らのこと嫌いかもしんねえけど、俺らだってそれ以上にあいつらのこと嫌いだしな」
伊田の顔を映してからの興奮しているような青山の顔
釣竿を少しこちらに引き寄せるような動作
ゆれを感じさせながら魚に少しでも食いついてもらおうとする姿
伊田がその辺に落ちている小石を話しながら蹴るようになる。
伊田「たいして偉くなんかないんだよ」
小石を蹴るカット、話す伊田のカット、蹴られた小石が転がっていくカットをそれぞれ
宇川「その通りだよな」
伊田の蹴った小石がちゃぽんと落ちる
そのちゃぽんとした水の波紋からすぐ近くに垂らされていた釣竿にカメラは移動しそのまま上昇し、青山の怒りながら横目で若者の方を睨む表情
青山の後ろを向いているカットからガッと首から後ろを振り向き若者を睨む
伊田がそれに気づき青山の顔を見る表情
目があったことを表すために青山のカメラ目線の表情、憎しみの顔
目があった上で何事もなさそうに視線を落とす
宇川「いやあ、昔に戻りたいよな」
宇川は話ながら伸びをするような動作、若者らしい壊れ方でその辺をとびはねたり、思いっきりスキップを始めたりする
伊田「だな、毎日、何も考えずに遊んでいた頃に戻りたいわ、ひゃっふ~」
伊田も狂いながら飛んだり跳ねたりでその辺を踊り出す
ちょっと遠ざかり踊り狂う二人の姿
今度は右下に青山の頭部から踊り狂う二人の姿ピントは伊田と宇川にあっている
そこからカメラを下にずらし怒りに震えている青山の顔ごしに踊り狂う二人、ピントは青山の怒りの顔
宇川の腰に手をあててチアリーダーみたく足をあげておどったら石を蹴ったらしく転がっていきおっさんのバケツにあたる
伊田は楽し過ぎてそこに転んでしまう
地面と水平に伊田の転がった顔を映す。
顔は笑っていて笑いながらも視線は石に
そこにはひらべったい石がある
それを拾いながら立ち上がる伊田
宇川がイカレて踊っている様子
宇川の肩越しに伊田が話しているカット
伊田「これやろうぜ、薄い石をさ、川に投げるやつ」
宇川「ああ、何バウンドもさせるやつか」
宇川も笑いながら手でバウンドするようなアクションを示す(ここは見ている者に分かりやすいような動作を説明する意味もこめて)
青山の後ろ姿
伊田「よおし」
投げようという動作をしたときに、青山の後ろ姿からゆっくりこちらを振り向く様子。(ここで投げる寸前までの動作をしてはならない。声をかけられても普通は投げる動作を止めることはできないため)
青山「き~、み~、た~、ち~」
振り向く後ろからのカット、怒りの顔、横からそれが後ろ向くカット、そして身体全体で怒りを表しながら立ち上がる姿
青山「いい加減にしてくれないかなあ~」
立ち上がった状態で、全身で怒りを表すように言う
きょとんとした棒立ちの伊田と宇川、そのカットの中で伊田の手から小石は落ちる
青山「もうちょっと周りを見て騒ぐようにしてくれないかなあ?ねえ、ねえ。私は今ここで釣りをしているよねえ。そこで騒いでいたら魚が逃げるとか考えないかな?
(若者たちを映すため読み上げる)もちろん騒ぐなとは言わないよ。聞いている感じ、君らだって毎日いやな思いをして生きているみたいだからさ、せっかくの休みくらい楽しく遊んだってかまうことはないさ。
そう、そうやって楽しく石を川にただ投げて遊ぶだけの遊びに興じたってかまうことはないさ。たださ、ただよ、もう少し周りを見渡して動けるようにしないと」
↑ここは撮影当日の私との話し合いで、撮影時にはセリフがガラッと変わった。怒りの場面で妥協的セリフがあると中途半端になるのでは?というのが主たる理由。
だらしない姿勢で聞き少し不満そうな伊田の顔、河原のまわりの風景をはさむ
話し終わったら、再度若者二人の正面からのカット
沈黙、宇川は言われたとおりに周りを見ている
言い負かせてやったようなドヤ顔の青山
宇川「でもおじさん。周りを見渡したら気付いたんだけど」
青山から斜め前を見る視線
宇川「あそこの看板にさ、」
指を差して宇川の顔から指先、看板があるとこを遠目に映す
「ここは釣り禁止」の看板を映しながら、宇川の声「ここは釣り禁止って書いてあるよ」
宇川の顔(無表情)、
伊田の顔(勝った顔ではなく無表情)、
青山の顔(逆にやられたぜみたいなちょい笑ってるような顔)
三人とも無言で、ひいたカットで三人の立ち位置を横から移す
カラスが「かぁーかぁー」と鳴き、川で魚がちゃぽんと跳ねるカット
始まりの合図的な題名出しはなし。エンドロールはつけてもいいが、最後のそれぞれ無表情の顔の時に、釣り人(板橋秀雅)、若者A(三文享楽)みたくテロップを使ってもいい。
自主映画、完成映像
さて、この脚本を映画にするとどうなるのか…それはこちらをご覧ください!
自主制作映画 短編『一人の怒れる釣り人』
どうでしょう、少しは感覚がつかめたのではないでしょうか?
「自分には映画なんて作るのは無理だ!」なんて悩んで切腹せずに、前向きに撮影する気持ちになったのではないでしょうか。
ほかにも90分のアクション映画や、自主制作CMも制作しているので、気になった方はいろいろ見て回って参考にしていってください。
ほか、この映画の製作途中動画の記事も書いているので、それを見るとまた新たな発見があるかも知れません。
by応援する私