ミートソースなんとか委員会のモーミンパパです。自分で会をつくっておいて、もう名称を忘れてしましいました。
その上、舌の根も乾かぬうちに、ナポリタンの紹介であります。
↓前回のナポリタン記事
我ながら呆れているのかというと、それがそうでもないのです。
なぜなら以前にも書いたと思いますが、私はナポリタンも大好きなのです。一番好きなのはアオリイカの天ぷらですし、スパゲティーに限っても実は一番はカルボナーラで二番目がミートソースですが、三番目には好きなのです。
あ、ミートソースも一番じゃなかった。一応、謝っておきます。すまぬ。
「無形文化遺産」とも呼ぶべき喫茶店ナポリタンをご紹介
日本にはいろいろおいしいものがあります。
イタリアにもあるでしょうが、ナポリタンはイタリアにはないですし、ミートソースもボロネーゼとちょっと変化していますし、カルボナーラは名前こそ同じですが、具材がまったく違うのです。それはまた機会を改めて。
それでナポリタンですが、わりと長生きしているのでいろいろ食べてきました。喫茶店でナポリタンがメニューに載るようになったのは、たぶん私が中学生の頃です。その頃から食べてます。
最初はタバスコの何たるかを知らず、瓶の底叩いてどぼどぼ振りかけ死ぬ思いをしました。ああ、懐かしい。あれは池袋のタカセでのことだったろうか。違うかな。なにしろ遠い昔なものですし、タバスコとのつきあいも長いので辛さに脳細胞の一部がやられて記憶が曖昧であります。
そんな私がたどり着いた、「無形文化遺産」とも呼ぶべきナポリタン、イタリアには存在しない「和食」の神髄的スパゲティーについて書きます。ちなみにふたつとも、タイヤおばけの星とかとは無縁の世界で輝くおいしいものです。
新橋「ポア」 ザ・昭和の純喫茶
ひとつめは私的「キング・オブ・ナポリタン」。
新橋はニュー新橋ビル2階で、マッサージ屋の怒涛の侵攻に孤塁を守るザ・昭和の純喫茶「ポア」であります。
広々とした店内は全面喫煙可能。夜になればSL広場を酔っぱらって歩いているところをテレビインタビューされそうな、ワイシャツとネクタイがからだの一部と化してしまったようなお父さんが目立ちます。でもそれほど煙くはない。最近のお父さんは、遠慮しつつタバコをふかす術を学んでいるようです。
メニューがない
ほとんどが近所の会社勤めの常連さんとおぼしきこの店で、一見さんが注意しなくてはならないのはメニューがないこと。テーブルに置いてないのはもちろん、オーダーを取りに来るお姉さんも手ぶらです。店の前には食品サンプルも並んでいるのですが、ちょっと脇にあって気づきにくいです。
それと時間によっては「いまの時間、食べ物はやってません」と言われてしまうこともあります。
ですから、昼時をねらって最初から心に「ナポリタン」を秘めて行くのがおすすめです。
敷居を高くしてしまいましたが、注文さえしてしまえばあとはリラックスタイムです。座り心地のいいソファでおくつろぎください。
音を楽しむ
ここが素晴らしいのは、ちらりと客席から覗ける厨房からスパゲティーを炒める音が聞こえてくること。
そのリズミカルかつ丁寧に仕事をしていそうな音に耳を傾けているうちに、さっき1階の「むさしや」でてんこ盛りナポリタンを食べてきたばかりのひとでも、お腹がぐううと鳴ってきます。いや、かなりの大食いのひと限定ならば、そういうこともあるかもしれません。
ちなみに飲み物とのセットを注文すると(たいていのひとはそうすると思いますが)、ちいさなポテトサラダが先に出てきます。これをちびりちびりと口に運びなから待つと、胃腸の活動もより活発となる仕組みです。
もちろん粉チーズとタバスコも出てきますが、粉チーズは小皿に入れられて出てくるのが少しさみしいです。決して量はちょびっとだけではないのですが、ナポリタンにはそれぞれが納得するまで粉チーズとタバスコを振りかけたいものですから。
ナポリタン
さて、肝心のナポリタンです。
ハム、ピーマン、タマネギ、マッシュルーム。いずれもよく炒めてあります。これはスパゲッティーもよく炒めてある証拠です。そうすることによってトマトケチャップの水気とともに酸味も飛び、コク深いまろやかさが出来上がるのです。
量より質。質とは…
量はさほど多くありません。量勝負のロメスパ一派とは一線を画しています。お父さんが腹八分目のいい感じで午後に臨める分量です。
量より質の勝負です。質とは高級ハムや無農薬ピーマンを使っているということではありません。仕事の質です。先ほども書いた炒めの作業に手抜きがないということです。
新橋はナポリタンの聖地とも呼ばれる場所です。有名店がいっぱいあります。なかでも「ポア」はその質において抜きんでています。
育ち盛りや大喰らいどもの反対意見にはあとで耳を貸していいですが、私としてはこのナポリタンこそ「キング・オブ・ナポリタン」であると宣言したいのであります。
石神井公園「辰巳軒」 ジョーカー・オブ・ナポリタン
「キング」といえば並び称されるべきは「クイーン」でしょうが、予定調和より意外性があったほうがおもしろいので、もうひとつは「ジョーカー・オブ・ナポリタン」の紹介となります。
石神井公園の「辰巳軒」です。どうです、場所も意外なら店名も意外でしょう。名前から想像できる通り、喫茶店ではなく食堂です。外観からして、長年営業してきた食堂であることを主張しています。
お姉さんが立っていたりするマッサージ屋を何軒も素通りしなくてはならない「ポア」も入りづらいといえばそうですが、こちらも駅から数分のバス通りにありながら知らないひとにはちょっと足を踏み入れにくい空気を漂わせています。
ましてやナポリタンがあるとは思えない。
ところが、です。店前の商品サンプルが置かれたケースをよく見ると、ごたまぜカオスな品揃えのなかに、ちゃんとスパゲティーナポリタンもあるのです。
店内は四人掛けテーブルが縦横に並べられていて、ひとりだとどこに座っていいか迷う感じですが、好きに座ってください。
壁にべたべたとメニューが貼られています。そのどこを探してもナポリタンの文字はありませんが、ご心配なく。ちいさな文字が列記されたテーブルのメニューには「スパゲティー(ナポリタン)」と記されています。
他にはスパゲティーのメニューはありません。ミートソースはなし。もちろん、カルボナーラもなし。ナポリタンのためだけに、麺を置いているとは、こだわりがあるのでしょうか。
あるのかもしれません。食堂ですが、ちゃんと粉チーズとタバスコが出てきます。わかっているのです。
ジョーカー
ただし、ジョーカーです。
グリンピースが載っています。エビが入っています。ハムやベーコンではなく、豚肉のコマ切れが入っています。タマネギがたっぷりです。量もたっぷりです。
ケチャップ
それだけでもジョーカーの資格ありですが、もっとジョーカーたる所以はケチャップがべちょべちょに使われているところであります。炒めが甘いせいもあってケチャップの水分が残っているナポリタンはたまにありますが、ここのはそうではありません。炒めても炒めてもべちょべちょに残ってしまうほど、大量のケチャップが投入されているとしか思えません。
なのに、酸っぱくない。
たぶんケチャップに負けないきぐらい油たっぷりこんで炒めまくっているのではないでしょうか。味が濃いので、粉チーズやタバスコの掛け甲斐があります。いくら振っても大丈夫。これはナポリタンファンにはたまりません。
強固な味
粉チーズまみれ、タバスコまみれにしてもたいして味変しない手強い相手なのです。これでもかと追い掛けしながら、うれしさとともに申し訳なさも生じ、粉チーズとタバスコ代で50円追加払いしたくなることでしょう。
てっぺんに昔ながらの純喫茶のナポリタンがでんと君臨し、マージナルな領域に食堂のナポリタンが潜伏する。この層の厚さがある限りは、ナポリタンは安泰であります。本来は対抗馬のはずのミートソースは、かなり不安な状況ですが。
モーミンパパの一句
それでは駄句を。夏は過ぎてしまいましたが、夏の駄句です。
白シャツに
赤シミ散らす
ナポリタン
サラリーマンのワイシャツと考えてもらってもいいのですが、
部活帰りの高校生が炒めのゆるいナポリタンをわしわししている様を思い浮かべて、ありもしなかった過ぎし日を思い出した気になってもらえればと思います。
↓他にも書いとります。