NHKの『将棋フォーカス』という番組で時たま行われている、1分切れ負け将棋が、
神業の領域と言っても過言でないバトル過ぎて、唖然とします。
どうも、永久三流ヘボ棋士、三文享楽でございます。
即興フリースタイルラップバトル、イロモネア即興ネタ、ねづっちの即興なぞかけ、
と、どれをとっても即興バトルには自分も頑張らなければならないと、奮起される勢いがあります。
それに劣らない即興バトルが、1分切れ負け将棋なのです。
私は毎日Youtubeで、フリースタイルのラップバトルを見漁っています。
それは即興でこれから作り出される世界を見たい気持ちに突き動かされるからです。
↓即興ラップの領域に踏み入れたい方はこちらから。
即興と言ってもラップバトルにはネタを考えておくというのはあるでしょう。
同じように早指し将棋にも前提の知識は必要なはずです。
そうしたバックグラウンドを背負って挑む勝負の世界、カッコイイですねえ。
今回はそうしたタイマンバトル、1分切れ負け将棋の記事です。
↓タイマンバトル?この戦場を忘れてはいかんでしょう。
NHK『将棋フォーカス』における1分切れ負け将棋
もう10戦も報じられました。
次週の『将棋フォーカス』で、「次週は1分切れ負け将棋が開催されます」と言われれば、1週間が楽しみで仕方ありません。
1分切れ負け将棋そのもののご紹介の前に、NHKで放送された実戦のご紹介をいたします。(敬称略ですみません)
10戦目 vs 屋敷 伸之
勝者 山崎 隆之
まあ、一手目で、時間的に山崎八段の勝利じゃないかなというところはありましたよね。
試合前のコメントで「特に対策はしていない」というところで、これが落ち着きあるオーラなのかとは思いましたが、蓋を開けてみればまるで早指しの感覚を取り戻すように最低限の練習をしてきている風にも見えませんでしたね。
落ち着き払って、確実に相手を詰ますのかとは最初恐怖がありましたが、当然に八段に昇り詰めている山崎氏を凌駕できるでもなく、ズルズルと試合は泥沼化しました。対策なしで、1分切れ負け将棋としての戦い方を練習している山崎八段に勝てるはずないですな。
なるべく動きが少ないような1分切れ負け将棋には、1分切れ負け将棋なりの戦い方があります。
最後は投了という形で敗北に終わってしまいました。
9戦目 vs 増田 康宏
勝者 山崎 隆之
まさに、若さが実力と経験に打ち負かされた感じでしたね。
増田四段の慎重かつ精密な攻めは魅力的でしたが、やはり王者に圧倒された感じでした。前回の深浦戦で負けていたというのもあったのでしょうか、意気込み的にも山崎王者が上回っている感がありましたね。
ほんの数秒の世界なので、具体的にどこがまでは言えないのですが、若いから早いという挑戦者の意気込みを軽く粉砕したように見受けられる試合でした。
8戦目 vs 深浦 康市
勝者 深浦 康市
ここへきて、8連勝を成し遂げていた山崎八段が遂に敗北してしまった瞬間でした。
それでいて、なんとも屈辱的な負け。絶対的な王者の初の動揺というようなものが見えてしまいました。試合的にも五分五分、あるいは、負けていたというのもあったのでしょう。
試合を見ていても、(誠に視聴者の勝手な意見ではありますが)一歩間違えれば命とりなやり取りの中、山崎八段に焦りは見えました。それが遂に、負けにつながってしまったのです。
絶対王者の人間らしいところを見た瞬間ではありましたが、歴史がひっくり返ったようななんとも興奮する日の放送でした。
7戦目 vs 先崎 学
勝者 山崎隆之
棋譜的には完全に山崎八段の勝利。こちらも先崎九段が1分切れ負け将棋であることを考えていない様子。
それほど早指しができないというならせめて分かるので、もう少し時間を意識した中で戦ってほしかった。
こういう時は時間切れはあまり考えないでほしい。
6戦目 vs 田村 康介
勝者 山崎隆之
ぱっと見では、風格的には田村七段の方が俄然に上に見えてしまいました。
試合的には特に斬新さがない定石多めな展開とはなりましたが、見ていて安心しつつも、ハラハラしました。
最後には、時間的にも棋譜的にも、山崎八段の圧倒的な勝利となりました。
5戦目 vs 中村 大地
勝者 山崎隆之
いやあ、我らがというか、いつも見ていた二人が戦い合って、あの中村大地六段があの山崎八段に負けたっていう印象でしたね。惜しい!
うーん、どちらも応援しちゃいましたよ。
ちなみに、中村大地六段というと、しいたけが嫌いな食べ物なようで、私としては非常に共感がもてる良い棋士ということになります。
4戦目 vs 飯島 栄治
勝者 山崎隆之
時間的にも内容的にもめちゃくちゃいい試合だったと思います。
だって、常に時間の使い方は同じくらい。両方とも詰めろうとかけそうなぐらいにギリギリなところで戦い続けていました。
最後に飯島七段の詰め筋に期待を寄せましたが、敗北。すげえいい試合をしたものの、挑戦者の敗北という形で終わってしまいました。
20秒近くずつ両者とも残ってのこの迫力ある試合、まさに超絶でした。
3戦目 vs 戸辺 誠
勝者 山崎隆之
いやあ、遂にこの二人が戦ったなというとこでした。
これもまた超絶的な戦いでしたな。特に、最初10秒の山崎八段の速さが驚異的過ぎました。
その後の解説を見ても、飛車を侵入させてからの凄まじき猛攻が語られこれを考えて早指しをやっていたと思うと、ただただ脱帽です。
2戦目 vs 佐藤 紳哉
勝者 山崎隆之
なんだかもう、最初の自然をよそおった腕ならしから、自然とアウターを脱ぎ、アウターの一種であるかつらを伊藤かりんさんにわたす瞬間で、もう勝ってくれと思っちゃいましたよね。
別にハゲ推しでもないですし、むしろ見た目だけで笑いをとりにいこうとする芸人は嫌いなのですが、笑う必要なんてまるでない将棋業界に「誰に頼まれてもないのに笑わしに来ている」このスタンスにやられてしまいましたよ。佐藤伸哉六段のパフォーマンスは大好きでしたが、改めて面白さと共にリスペクトをしました。
将棋の内容としても惜しかったと思います。
本来山崎八段の連勝に注目すべきところではあるのですが、佐藤六段のパフォーマンスにもっていかれたような展開となりました。
この時のかつらはずしが他番組などで「盤外戦術」として紹介されることがあります。
しかし、長い間佐藤六段を見ていれば分かるでしょう。これは「盤外戦術」なんかではなく、
ただやりたいだけなんだ
、と。
1戦目 vs 阿部 光瑠
勝者 山崎隆之
いやあ、初戦を勝利。
山崎八段がすげえというのもさることながら、1分切れ負け将棋をここまでやりとげられる棋士ってすげえ。
というのが率直な感想です。
1分切れ負け将棋と聞いても「なにがどれだけスゴいのか」が分かりにくいと思いますが、この実戦を見れば棋士の頭のスゴさを思い知ることになりますよね。
ところで、阿部六段のにこにこ顔っていいですよね。
にこにこでなくニヤニヤなんて書かれてましたが、見ていてこちらも笑ってしまうものです。
なにはともあれ、山崎八段の歴史的な快挙が始まった一戦と言えるでしょう。
1分切れ負け将棋とは
時間管理
将棋の大会には、対局者それぞれに使える時間(持ち時間)が与えれる形式の対局があります。
それぞれの持ち時間はそれぞれがなんとなく覚えて対局しているというわけではありません。
対局専用時計というものがあるのです。
これは対局両者の間に置かれる将棋など対局専用の時計です。
アマチュアの大会などでは25分や30分が多いのですが、この時計にまず持ち時間がセットされることになります。
基本的には将棋を始める際に後手番が最初に時計を押すことになります。
そうすると、先手番の時間が減り始めます。先手番は自分の将棋を指したら、時計を押して今度は後手番の時間を進行させます。
今度は後手番が自分の手を指し次第、時計を推します。そうすると、時間の進行が相手にうつります。
これを繰り返していくことになります。
デジタルならば00秒になれば負け、アナログならば00秒付近にある針が降り切れたら負けということになります。
これが持ち時間の時間切れに近づくほど、絶望的な気分になるのは体感した人にしか分からないものですよね。
実際、残り1分を切った時、それも次に進めるかを賭けたリーグ戦の大事な時ほど、私自身何度震えた手で時計を押したことでしょうか。
ちなみに、対局時計は将棋を指した方の手で押すのが礼儀です。
というより、正式なやり方です。
右手で将棋を指して左手で時計を押す方が早いじゃないかと思われますが、右手で指した瞬間に左手で時計を押すのはいいものの、右手で指すちょっと前に左手で時計を押されたらよく分からないことになります。
指してもいないのに相手の時間を進められたら、今回の1分切れ負け将棋のような時間の差し迫った将棋では公平な戦いとなりません。
そのため、対局時計を押すのは、実際に将棋の駒を動かした手を使うのが常識となっています。
NHKの『将棋フォーカス』の「1分切れ負け将棋」でも、こちらの時計を使っていますね。
自身で自分の時間管理を責任もって行うからこそ、ここまでの迫力も出るのでしょう。
将棋を指したら指した手で自分のターンを終わらす、こういうことです。
早指し戦
NHK『将棋フォーカス』では、上述したように対局時計を用いて1分切れ負け将棋が行われます。
自分の持ち時間1分を使い切るまでに相手を詰ませなければいけません。
相手の1分を先に使い切れば勝ち、という考え方もできます。
しかし、これが難しい!
相手の時間を使い切る前に、自分が負けてはいけないというのはついてまわります。
相手が自分を負かすまでに逃げる方法を考える間にも時間は使われてしまうのです。
相手がミスなく攻めてくれば、こちらもミスなく逃げない限り負かされる。ミスなく逃げればいいというのは理想論。
これがなかなかできないのです。
それを終結までもっていくのだから、この熱戦は本当に超絶的なのです。
ちなみに、1970年前後から2003年まで、早指し将棋選手権や早指し新鋭戦という番組がありましたが、
1分といえばそれをはるかに超えるのです。
三文
私も将棋部に所属していた男、1分切れ負け将棋まではしませんでしたが、一手十秒将棋というのはやっていました。25分30秒ルールの大会が多かったために、一手を長考せずに指すという鍛錬も不可欠だったわけです。
これできつくてきつくてテンパって何をやってしまうか分からないかったというのに。
自分も守りつつ、相手を攻め落とす。
この過程を一手1秒もかからないレベルで差していくのだから、思考回路がどうなっているのかわかりません。
ちなみに、25分30秒ルールとは持ち時間が各々25分ずつありまして、その時間を使い果たしてしまった後は30秒以内で毎度一手をさしていくというルールでございます。
山崎八段
さて、この1分切れ負け将棋ですが、連覇しているのは山崎隆之八段です。
ちなみに、こういう時に紹介することではありませんが、山崎八段はコンピューターに将棋で負けたことでニュースになりました。
「あの山崎八段が…」というショックでしたね。
どうでしょう、自然と導き出される問いは。
そうです、1分切れ負け将棋の頂点に立つのはもしかしたらコンピューターなのではないか?ということです。
まだ、そんな企画が出てはいませんが、いずれそういう時代が来ることも容易に想像できるだけに怖いですよね。
しかしまあ、そんな中、藤井総太四段の歴史的な連勝記録という明るいニュースが出てきて嬉しいものです。
1分切れ負け将棋の覇者山崎八段VS藤井総太なんていう試合が行われないか、というのもひそかに楽しみにしています。
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