辛い物は癖になります。痺れるものは、もっと癖になるようです。
というわけで、麻婆豆腐はどんどん辛いのが食べたくなる恐るべき食べ物であります。
陳健民さんが日本に紹介したときは、日本人向きにかなりソフトにアレンジしたようですが、それから幾星霜、三代目が活躍する時代になって激辛、激シビを大汗だらだら鼻水たらたらで食べる日本人が珍しくなくなりました。
「激」に疲れた舌を、食べながら癒しましょう
わたし(モーミンパパ)も一時は激シビに走り、初めてのお客さんには辛さ増しを出してくれない中華料理店で、黙っているのに激辛を出してくれるまでになりました。もちろん、大汗だらだら鼻水たらたらの上に、ピリピリの舌を犬みたいに風に当てながら満足していました。
しかし閾値を高くするだけ高くしてしまうと、ひとはその刺激に飽きるのでしょうか。いまでは店が標準で出しているものをおいしくいただいています。
わたしは麻婆豆腐が好きです。
好きなものは、毎日でも食べたい。は、おおげさですが、頻繁に食べたい。そのためには、あまり刺激的であってはかえってよろしくない。その場は満足しても、食べ終わったあとで舌も胃も腸も脳も、疲れてしまうからです。
すると、「しばらくいいか」となってしまいます。
高井戸「麻婆テーブル」
そうはならない、適度な刺激のある麻婆豆腐という意味で、いまのわたしにぴったりきたのが高井戸「麻婆テーブル」の麻婆豆腐です。店名に入っているくらいだから、当然この店の看板メニューです。
井の頭線高井戸駅からだと、徒歩5分ほどでしょうか。井の頭通と五日市街道を跨ぐ環八が陸橋になったところにあります。ビルの一階のおしゃれな店です。
店主は以前、同じ高井戸にある「シナバー」という店にいたひとで、そちらにもうかがって麻婆豆腐も食べたこともあるのですが、当時のわたしは大汗にまみれて満足していた頃だったので、「やや上品においしい麻婆豆腐だな」と思っていました。
その「やや上品」が、いまのわたしには「毎日でも食べられそう」と評価が変わって私的暫定一位の麻婆豆腐に昇格してしまいました。
上品だから毎日でもオーケー
ランチだと、サラダと茹で餃子がついたセットでちょうど千円。
11時半の開店ですが、人気があるので12時前に入店したほうがいいです。それか逆に13時過ぎ。
先にサラダと茹で餃子が出てきます。箸休めに取っておいてもいいですが、ご飯だけで十分舌をマイルドにしてくれる麻婆豆腐ですので、食べながら待っても問題ありません。
さて、麻婆豆腐です。見た目は「ザ・麻婆豆腐」です。
色も赤過ぎず、黒過ぎず。
健康な胃腸の持ち主なら、見ただけで食欲が湧いてくる色合いです。
味は、やさしく辛い。ちゃんと辛いんです。ちゃんと痺れるんです。しかし唐辛子もホワジャオも暴れてはいません。一流のボクサーがトレーニングでサンドバックを叩いている感じで、舌や胃を打ってきてくれます。
豆腐がまたよろしい。固すぎず柔らかすぎずで、やや小ぶりに切られているので二学期の学級委員のようにみんなをうまく纏めてくれます。
ごはんもおいしい。
モーミンパパのまとめ。さらば汗だらだら。
食べ終わっても、汗だらだらにはなりません。からだがほこほこ温まっています。
激辛、激シビの麻婆豆腐をいろんな店で食べたひとにこそ、原点回帰的に食べてもらいたい一品です。
食べたことを他人に自慢できるようなものではありませんし、高井戸はわざわざ行っても他にとくになにがあるわけでもない場所ですが、わたしは家から50分近く歩いて行く価値を認めています。