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【タンメン・つけ麺】目白、荻窪「丸長」の幻の一杯を求めて

実は若い頃から、大食いでもなければ、早食いでもありませんでした。おまけに軽い猫舌であります。

なので、どんなにおいしくても、客が黙々とドンブリに向かうタイプの店は苦手でした。そんなモーミンパパです。

あと、行列に並ぶのも好きではありません。高田馬場のとんかつの名店「成蔵」にも、行列にうんざりしてご無沙汰しています。ご主人がキャベツを注文ごとに千切りしていた開店当初が懐かしいです。

そんな私ですが、かつては開店前からの行列に並び、黙々と箸を動かす苦行を甘んじて受け入れていた店がありました。

 

目白「中華そば 丸長」

目白の「丸長」です。

いまを去る何年前でしょうか。いまのこぎれいな店舗になる前、同じ場所ですが看板建築の長屋の一角で暖簾を出していた頃です。それも前のご主人が元気に店を切り盛りしていたときからです。

時は流れましたが、いまでも「丸長」は、つけそばの人気店です。

いまもそうかもしれませんが、野菜つけが一番人気でした。それに細切れのチャーシューも盛られたチャーシュー野菜つけは限定品で、開店前から並ばなければまず口にできませんでした。

私も並びました。午前11時開店の15分くらい前に行くと、すでに56人は待っているひとがいました。当時は夜中や明け方まで仕事や呑み歩きをしていたので、正直いえば昼前の私の胃腸はまだレム睡眠のさなかでした。麺たでけでもどっさりある「丸長」のつけそばに、野菜と、さらにチャーシューまでどっさりは苦役ともいえました。それでもからだが要求する食欲ではなく、脳と舌が要求する「旨欲」とでも呼ぶべきものに負けて、私は眠い目をこすって開店を待ったものです。たいていは、野菜とチャーシューを少なめに持ってもらう「小鉢」を注文していましたが。

以前の「丸長」は中休みを挟んで、夜も営業していました。

夜はチャーシュー野菜つけは売り切れです。たいていのひとは、野菜つけを注文します。たまにラーメンのひともいました。私も夏場は野菜つけを食べていましたが、少しでも気温が下がれば別のものを注文しました。「丸長」にはラーメンもあって、そちらが好きなひともいます。年配のひとに多かった気がします。それでもありません。

不人気メニューか? タンメン

私以外のひとが注文しているのは数度しか見ていない、かなりの不人気メニューでしたが、タンメンがあったのです。

「タンメン」

私が遠慮気味にそう発声するたび、周囲のお客さんの奇異の目が飛んできました。そんなもの、食べるの?

食べます。変わり者ですみませんといった態度を取りつつ、私は内心で他のお客さんを嘲笑っていたのです。先入観と他者追従に生きる愚か者どもめ、ここのタンメンのうまさも知らずに、つけそばばかりを啜っているがよい。うわははは。

タンメン担当

当時の「丸長」はご主人とお母さん、それに娘さんふたりが店に立っていました。そのうち一番ヒマそうにしているお母さんが、俄然やる気になります。タンメンはお母さん担当なのです。

麺は大釜で何人前もまとめて茹で上げられるのですが、そのうち私のぶんだけが途中で小鍋に移されます。あとは大ざるにあけられて、上の娘さんによって水でしっかりと揉み洗いされます。一方お母さんは野菜と一緒に麺を煮込んで、タンメンを完成させるのです。

つけそば用の太い麺に合わせた、しっかりした味つけのされたコクのあるスープに、おそらくは野菜つけようの野菜に少しべつのものを足した具材がどかっと載っているタンメンでした。

のちに少し流行る「こってりタンメン」のはしりだったともいえますが、もっと麺とスープと野菜が混然一体となったものでした。決め手はお母さんの煮込み作業にあったのかもしれません。

これがおいしかった。チャーシュー野菜つけそばも十分においしいしよそでは食べられない唯一無二の辛くて、酸っぱくて、しょっぱくて、脂っぽくて、脳がしびれる魔物でしたが、タンメンもまた唯我独尊の境地にある一杯でした。

とにかく、おいしかった。

それがある日、メニューから姿を消していたのです。

店を仕切っていたご主人が亡くなり、三人体制となった「丸長」はメニューの簡素化を図ったのです。一杯ずつ小鍋で仕上げるタンメンは、お母さんという遊軍があってこそできるものでした。お母さんも前線の戦力にならざるを得なくなったとき、消えていくのは仕方のないことではありました。

そして、私は目白の地を離れて「丸長」にも足を運ばなくなりました。

 

久しぶりの「丸長」

先日、久しぶりに目白の「丸長」を訪れました。

平日の午後12時半頃だから、ランチタイムのどまんなかです。大行列だったら、あたりを散歩して時間を潰すつもりでしたが、店の前にはだれもいませんでした。もしやお休みかと思いましたが、営業はしているようです。ならば人気が落ちたのかと不安になりつつ扉を開けると、なかはほぼ満席でした。

もう娘さんとは呼べない年齢になっている娘さんふたりが、いまも元気に店に立っていました。それ以外にもふたりが厨房にいます。

タンメンはありません。

「チャーシュー野菜つけそばはありますか」

恐る恐るのぼくの注文は、すんなりと通りました。どうやら、チャーシューの仕込みを大幅に増やしたようです。

それ以上に驚いたのは、注文から30秒絶たないうちに、目の前に皿が出てきたことです。どうやら、来店や注文を待たずに麺をどんどん茹でているようで、これなら待ち時間がありませんから、回転もよくなり、行列もなくなるというわけです。

チャーシュー野菜つけそば

 

 

チャーシュー野菜つけそばは、依然とまったく変わらぬドカンとした盛りであり、ガツンとした味でした。おいしい。

味はそのままに、合理的経営を目指す。それが目白の「丸長」の方針のようです。だとしたら、タンメンの復活はないです。満足と満腹とにもかかわらずの一抹のさみしさを抱えて、私は若いころに通った店をあとにしました。

 

荻窪でも「丸長」

目白を引き払って二年後、私は荻窪に引っ越しました。

荻窪は一般には荻窪ラーメンで知られていますが、「丸長」もあります。それも目白と肩を並べる人気店です。というか、「丸長のれん会」なる系図によりますと、ここが都内近県各地に点在するすべての「丸長」の源流となる店となっています。

ただし、こちらには野菜つけそばはメニューにありません。

そのことは知っていたので、引っ越してしばらくのあいだ私はここを訪れませんでした。たんめんはともかく、野菜つけそばもないのでは、私にとってはあまり魅力のある店ではありません。荻窪並びに中央線沿線には、他に魅力のある飲食店がずらりと揃っていたので、そちらを優先してしまいました。目白同様、ここも行列ができていることが、電車のなかから見えたせいもあります。

引っ越して半年後くらいでしょうか。「丸長」近くの古本屋に行ったついでに覗いてみると、その日は店の前に行列ができていませんでした。

ならばと、私は暖簾をくぐりました。

長いカウンターの空いている席に座り、壁に貼られたメニューを眺めました。野菜つけそばがないかわりに、ここにはたけのこつけそばがありました。私はメンマが大好きです。それにしようかと思いつつ視線を移動すると、ラーメン類のところに思いがけない名前を見つけました。愛していたのに事情があって別れなければならなかった恋人との、突然の再会を果たしたように私は息を呑みました。

おしぼりと水を運んでくれてお母さんに、私はしゃがれた声で注文しました。

「たんめん」

再会

お母さんは一瞬、おやという顔になりましたが、何もいわずに厨房のなかに下がっていきました。

不安と期待を交錯させて、私は厨房を注視しました。たんめん、はあった。だがそれが目白の「丸長」と同じあるいは似たものであるかどうかはわかりません。

大釜に面を投じるご主人の手元を見ると、麺は目白同様の太麺でした。それが茹で上がる前に、一人前が抜かれます。お母さんが受け取り、火にかかった小鍋に麺を入れる。

デジャヴ、です。

目白の「丸長」と同じ手順で、タンメンは仕上がっていきました。

私の前にどんぶりが届きました。野菜つけそばがないにも関わらず、目白と同じ顔をしたタンメンでした。

そして、同じ味がしました。

以来、私は足繁く「丸長」に通い、判で押したようにタンメンを注文しましいた。私以外に注文しているひとの姿は、ついぞ見かけることはありませんでした。

そして…

また月日が流れました。そのあいだに年配の夫婦だけだった店に娘さんと思しき年頃の女性が加わり、さらに同年配の男性も加わりました。店は繁盛しつづけました。やがて男性の姿を見なくなりました。女性もいたりいなかったりになりました。店はときおり、臨時休業するようになりました。

そんなある日、私が店を訪れて席に着くと、おしぼりと水を運んできたお母さんが申し訳なさそうに言いました。

「ごめんね。タンメン、やめちゃったの」

私は言葉を失いました。しばらくぼんやりと壁を眺め、力のない声で注文しました。

「だったら、たけのこつけそば」

どうやら私は、タンメンを食べる客としはて認識されていたようです。他に注文するひとがいないのだから、当然だし、そんなメニューが削られてしまうのも当然といえば当然のなりゆきだったのでしょう。

気がつけば店を切り盛りするのは、お母さんとご主人のふたりに戻っていました。

私はそれからも「丸長」に行って何度かたけのこつけそばを食べましたが、いつしか足は遠のいていきました。

たけのこつけそば

目白の「丸長」に行った数日後、私は久しぶりに荻窪の「丸長」に足を運びました。

あいかわらずの行列に並び、席に着くと、お母さんがおしぼりと水を運んできました。私はたけのこつけそばを注文しました。

ここのたけのこは最近はやりの太くて色の淡い高級感のあるものではなく、しっかり味つけされた茶色で少し萎びたようなもので、ここの太麺や濃くて胡椒まみれのつけダレに負けないものです。

てんこ盛りされたたけのこをかき分けながら、麺をつけダレに浸して啜ります。

よそでは味わえないガラパゴス的なおいしさが、舌から胃へと広がっていきます。もっと通う価値のある味だと、あらためて認識しました。

店を出ると、お母さんが「ありがとうね」と声をかけてくれました。いまでも私がタンメンの客だと覚えていて、ないのがわかっているのに来てくれてありがとうという思いが伝わってきました。

 

モーミンパパのまとめ

目白の「丸長」の野菜つけそばも、荻窪の「丸長」のたけのこつけそばも、十分においしいです。

でも、タンメンはありません。

実は荻窪の「丸長」がタンメンをやめて幻の一杯となってしまったあと、まだ私が見つけていないだけでどこかにほぼ同じタンメンが存在するのではないかと探しつづけました。

残念ながら、それはまだ見つかっていません。

いままで探したなかで、一番近かったタンメンを紹介して、この稿を終えたいと思います。

それは四ツ谷の「こうや」のタンメンです。タンメン好きにはわりと知られた人気店です。そこのタンメンが中細麺ではなく太麺であったなら、私の探している一杯にかなり近いものになると思います。

「こうや」は、以前は麺の太さを選べたそうです。私は遅れてきた客だったようです。できれば、そのシステムを復活してもらいたいものです。

 

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モーミンパパ プロフィール

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 ブログ管理人の父でもあり、ライターでもある存在。
ムーミンパパの要領で、モーミンパパ(管理人のペンネーム=紅葉葉 秀秀逸)。文章の道を行く、グルメオヤジ。

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