モーミンパパ 音楽紹介

「好きなことをして生きる」を実践しているひとの話【シマモトさん】

2017年11月7日

ここのところ胸やけがして、食べ歩きに支障をきたしているモーミンパパです。

だから、というわけではありませんが、たまには飲食抜きの話を書いてみます。

考えてみれば、私が間借りしているこのブログは「回転オトエフミ」なるタイトルを冠しているわけで、なにが「回転」なのかはわかりませんが、「オトエフミ」は漢字に直すと「音、絵、文」なわけですから、そっち方面のことも少しずつ書こうかと思い始めた「芸術の秋」であります。


「好きなことをして生きる」 シマモトさん

私の古くからの知り合いに、シマモトさんというひとがいます。

私よりは一世代上のひとで、若い頃はヒッピーのようにして暮らしていたそうです。

小器用なひとで、その後、文章と4コマ漫画やイラストなどを雑誌やスポーツ新聞に載せて、生活するようになりました。仕事の内容に触れると長く煩雑になるので略しますが、遊んでいるとしか思えない仕事ぶりで、周囲や読者を羨ましがらせて生きてきました。

一緒に仕事をしていたので、現実は必ずしもお気楽なだけではないことを私は知っていましたが、それでも私もシマモトさんのように生きられたらなあと何度も思ったものです。シマモトさんと私は顔がとても似ていて、ふたりで呑みにいくとよく兄弟と間違われました。そんなこともあって、一時期はかなり親しくしていました。

 

ある日

「五十歳になったよ」

ふたりで呑んでいたある晩、シマモトさんはそうこぼしました。私としては、長生きしてしまったなあみたいな台詞がつづくものと思っていました。

遊びが原因で、シマモトさんは一度死にかけたことがあったのです。病院に見舞ったとき、ベッドに横たわるシマモトさんを見て正直、このひとは助からないと確信しました。ところが出来の悪い小説か映画のごとき奇跡が起こり、シマモトさんは九死に一生を得ていたのです。

シマモトさんは私の予想をはるかに超えた境地に達していました。

「人生、半分終わっちゃったよ」

半分って、このひとは百歳まで生きるつもりなのか。半分呆れ、半分感心して、私は次の言葉を待ちました。

「残りの半分は、好きなことをして生きようと思うんだ」

今度は、完全に呆れました。どの口がそれを言うか。好きなことをして生きてきた標本として没後は博物館に展示されてもおかしくないひとが、これ以上どんな好きなことをしようというのか。

「歌手になろうと思うんだ」

どんなに出来の悪い小説や映画でも、こんな展開はないだろう。しかし、事実は小説より奇なり、です。あるいは不出来なり、です。

「いいんじゃないの」

辛うじて、私はそう応じました。私のほうがカラオケが上手いとか、否定材料はずらりと揃っていましたが、口にするには私は度肝を抜かれ過ぎていました。シマモトさんが真剣そのものなのが、弟同然につきあっていた私にはわかりましたし。

 

ペーソス

二年後、シマモトさんはペーソスなるグループを組み、いわゆるインディーレーベルからですが、CDデビューを果たしました。そのアルバムのなかの一曲は、主にBSでしか流れませんでしたが、CMソングに起用されました。

デビューから十年以上の月日が流れました。

シマモトさんと私は、いつしかあまり顔が似ていなくなっていました。会うのも、年に二、三度になりました。そのうち一度は、飲み屋でばったりというパターンです。

では、残りはというと、ペーソスのライブに足を運んだときです。

いまだにシマモトさんは歌いつづけているのです。

先日、ライブに行ってきました。下北沢のライブバーで、集まった観客は三十人ほどでした。歌手になって、成功したとはいえません。しかし、失敗したともいえません。ペーソスは年間数十本のライブをこなし、地方のファンに呼ばれてツアーを組んだり、企業のイベントで演奏して結構なギャラをもらったりもしているのです。

なんといっても、シマモトさんはちゃんと好きなことをして生きているのです。デビュー以来ずっと、月に一曲オリジナルをつくりつづけているのです。

久しぶりのライブでも、新しい曲が披露されました。馴染みの曲も披露されました。アンコールでは客席から合唱も起きました。私もすっかり暗記している歌詞を大声で歌っていました。

 

Barバッカスにて」

その夜、私が一番ぐっときたのは「Barバッカスにて」という、かつて高田馬場に実在した店を歌った曲です。わたしもシマモトさんと何度かその店を訪れて、ママに濃い水割りを呑まされたせいもありますが、これは名曲です。

ペーソスは平成歌謡グループです。シマモトさんは自分の歌を「シャンソン」と称しています。歌詞の多くは、おじさんの悲哀を歌っています。

古臭さが一周どころか二周まわって新しく感じる若いひともいるでしょうし、実際若いファンもいますが、ライブに足を運んでもらいたくてこの文章を書いたのではありません。

こんなひとがいて、五十歳から宣言通りに好きに生きていることを、書いておきたくなったのです。

 

シマモトさん

シマモトさんは「音、絵、文」のみっつともを遊びながら仕事にしてしまいました。血は繋がっていませんが、弟として羨ましく、誇らしい気持ちです。私も負けていられないので、とりあえずこれを書き終えたらギターを弾こうと思います。

なお補足ですが、このブログの「絵」は主に映画を指しているようですが、ペーソスのメンバーとしてサックスを吹いているスエイさん原作の映画で、シマモトさんはまもなく俳優デビューも果たすようです。

 

他にもいろいろ書いてます。