考察 雑学

文化によって「からだ」に対する考え方は変わるの?

2015年8月10日

あやしいオレンジの神聖な明かり

生きることは創造なのです。

信じるのです。

 

 

…と、こう書くと怪しいが、真意でもある。

このブログでは、趣味の映画・CM制作や作曲、ちょっとしたプログラミングについて書いているが、それはいずれも「創造」である。

…しかし、世の中には、もっと物理的で肉体的な側面から「創造」を考える人たちもいる。
この記事では少し視点を変えて、「体操」によって「からだ」から「創造」を考えて見ようと思う。

 

文化によって「からだ」に対する考え方はこんなに変わる…の?

この記事では野口体操ヨガを比較して、からだに対する考え方の違いを考察する。まずは誰も聞いたことがないかも知れない体操である、野口体操について書こうと思う。

野口体操

野口体操は、東京芸術大学名誉教授・野口三千三(1914〜1998年)によって創始された体操である。

野口は、『人間の外側から何かを付け加えたり、取り除いたりするのではなく、人間の一生における可能性のすべての種・芽は、現在の自分のなかに存在する』と考えていた。
そこで自分自身のからだの動きを手がかりとして、自分も含めて誰も気付いていない無限の可能性を見つけ育てる野口体操を編みだした。野口体操は自然に貞(き)く・からだに貞(き)くをモットーとしている。

野口体操のHPはこちら→http://www.noguchi-taisou.jp/

(こう書くと怪しいが、ヨガも怪しい雰囲気は持っているし、体操というのはそういうものなのかも知れない。そんなことないか。)

生きることは創造

野口体操は生きることを創造と捉えている。

創造の準備として自身の体を自然な状態、ニュートラルな状態にしておきたいと考える。からだの力を極力抜き、からだを柔らかい状態にすることが野口体操の根幹にある。
力を抜くことで、やわらかさだけでなく、たくみさ(巧緻性)つよさ(強靭性)といった動きの在り方も手に入れることができると考えるのだ。
力を抜き、からだを重さに任せることで、ゆらゆらと揺れる感じを大事にするのが野口体操なのである。

(このように、やはり怪しさは全開だが、ヨガも知らない人がみたら怪しいポーズなので、まあ体操で健康になろうとすると、最終的にはこういう思想にまで昇華されるということだとも考えられる。)

体操する石像

ぶれない野口体操

「重力」「重さ」を重要なキーワードとしている野口体操では、からだを部分ごとに分析的に分けて考えたりはせずに、全体を一つのまとまった“からだ”として考えている。ぜんくつ上体のぶらさげなどはその典型例である。典型的な回転木馬みたいなものである。
そもそも上体の“ぶらさげ”という名前がすでに野口体操が重要視している「重力」「重さ」や「力を抜くこと」などを連想させる。

この辺りからも、野口体操がその根底にある考えを大事に抱えるようにして発展してきたのが見て取れる。この体操に多くの支持層がいるのはそういったところも影響しているのかもしれない(考えにムラのあるものは人々の信頼を得るのは難しいものである)。
野口体操には堅苦しく緊張した状態で生きる現代社会(ストレス社会である)に対するアンチテーゼ的な側面も感じ取れるが、そういった点も確固たる支持者を生み出した背景かもしれない。

話が少しずれたが、以上に挙げたことが野口体操の主な特徴である。

 

では次にヨガについてまとめてみる。

ヨガとは

ヨガ 後姿

ヨガとは古代インド発祥の修行法であるが、一口にヨガと言っても実際には姿勢(アーサナ)や呼吸法(プラーナーヤーマ)のみを重視する健康ヨガ的なものや、瞑想による精神統一を重視するものなど様々であるが、ここでは姿勢や呼吸法のみを重視する健康ヨガについて調べていく。

尤も、現在日本で流行している健康ヨガは単なるエクササイズ的になってしまい、本来のヨガとはかけ離れているケースも少なくない。だがそれでも根底にある考え方は受け継がれているはずなので、ヨガの根幹部分にある思想について考えたい。

アーサナ(姿勢)と、プラーナーヤーマ(呼吸法)

健康ヨガに於けるアーサナ(姿勢)は呼吸と動作を合わせて行う。弛緩(力を抜くこと)と緊張(力を入れること)のバランスをとり、動作と呼吸をコントロールし、からだの調和を取り戻すことを目的とする。

一方、プラーナーヤーマ(呼吸法)は腹式呼吸(正式には横隔膜を上下させて動かし、肺の周りを大きくしたり小さくしたりすることで呼吸を行うため「横隔膜式呼吸法」という)で、人間を含む哺乳類の持つ本来の呼吸法を用いて行う。他にも喉を狭くして行うウジャイや、細胞呼吸法などがある。そういった様々な呼吸法があるという点からみてもヨガは呼吸を大事にしているとわかる。

アーサナ(姿勢)の種類

アーサナには大別して

  1. 前屈のアーサナ(体を前部に倒す)
  2. 伸展のアーサナ(体を反らす)
  3. ねじりのアーサナ(体をねじる)
  4. 首を柔軟にし、強化するアーサナ

の四つがある。

そのどれもがからだの神経をうまく刺激して、様々な機能を活性化させるポーズである。

これらのポーズは「死体のポーズ」だとか「くつろぎのポーズ」などと呼ばれる。アーサナが適度に力を抜いた状態でリラックスして行うのを目的としていることが分かる名称である。

ヨガの根底

ヨガに関する著書を読むと「ヨガの基本は絶対に無理をしない事」といってような類のことが書かれていることが多い。呼吸法ひとつをとってみてもヨガが自然体を意識しているのは明らかであると言える。
そういった点は野口体操の「力を抜く」などの考えに通じるところがある。また、細かい部分にもいろいろと野口体操の思想に似たところがある。

ヨガはインドで主に行われてきたものだが、インドは地理的にも歴史的にも中国の影響を強く受けている。中国と言えば歴史上では長い間、東洋の文化の発祥地であった。そう考えるとヨガの根底に東洋的思想が混ざっていたとしてもおかしくはない。
また、野口体操は東洋人である野口三千三によって産み出された(この授業の名前も「東洋的フィットネス」である)。

つながる「ヨガ」と「野口体操」

これらのことを踏まえると、ヨガと野口体操の間にはそれほどの文化的差異によるからだに対する考え方の違いはないのではないかと思う。ヨガが欧米などの合理的発想から生まれたものとは考えにくく、ヨガが瞑想を重要視しているところなどからも精神性を大事にしたものではあるのは明らかである。

謎の魂的写真

よって、野口体操とヨガの根底思想は対立するものではなくむしろ同系統のものであり、発想の段階から二つの間には通ずるものがあったと考える方が自然である。「自然体」「緊張を解く」「リラックス」などはどちらもが狙っているものである。

以上のことから、ヨガと野口体操を比較してわかるのは日本とインドに於ける、からだに対する捉え方の違いではなく、むしろ共通性であったと言える。
ブログでは軽くしか触れられていないが、野口体操をもっと知るならこの本に考え方が詰まっているので、一読するのも手だ。

結果、東洋と欧米では捉え方が大きく違うが、東洋内ではそれほどの差異はないのではないかという考えに至った。

これをまた創作に活かしていければ素晴らしいものである。