温かい色調、冷たい色調、あざやか、モノトーン…映像の印象は、色で思いのほか大きく変わることをご存知だろうか?
映画では非常に重要な項目である。
色合いを思い通りにする色調補正を、カラーコレクション(略してカラコレ)と呼ぶ。カラータイミングや、カラーグレーディングと言う言葉もあり、それぞれ微妙に使われ方が違うのだが、とりあえずここでは深くは触れず、カラコレで統一しておく。
しかし、カラコレが大事だと言われても実際にどうやれば「いい感じの色合い」になるのかわからない人も多いと思う。
そこで今回は、Aviutl(動画加工ソフト)でカラコレをする場合のやり方、設定の実例を紹介したいと思う。
ちなみにこの記事は初心者向けではあるが、一応Aviutlを使ったことがある人を想定している。
ちなみに、カラコレをする動画についてはこのブログではおなじみの、私が過去に作った90分のアクション大作自主映画『抜本-BAPPON-』のワンシーンを使いつつ説明していく。
▼併せて読むと理解が深まる記事
Aviutlでのカラーコレクション(カラコレ)のやり方
まず、今回色々といじっていくのは、この動画にする。読者の皆さんは、各々適当な動画をAviutlに読み込んで頂きたい。
↑自主アクション映画『抜本-BAPPON-』のワンカット
『抜本-BAPPON-』少子化問題が壮大なバトルへと繋がる、壮大なシリアスバカアクション映画であるが、この動画は、その中のワンカットである。だが、あくまでもカラコレをする前の素の状態の動画だ。
使っている機材も単なるホームビデオなので、雰囲気はなんとなく大層だが、映像はどっかのっぺりとした印象を受けると思う。
それではこの動画をカラコレで色々な雰囲気に仕立て上げていく。色々なパターンを紹介するが、カラコレ前にまず共通して行う作業がある。
まずは直前オブジェクト
Aviutlに対象の動画を読み込んだ後、拡張編集画面上で右クリックをして、「直前オブジェクト」をクリックする。
直前オブジェクトに関して詳しく知りたい方は、こちらのサイトをご覧頂きたい。
直前オブジェクトは同じ画像や図形を複数配置するときや、それぞれに異なるフィルタ効果をかけたいときに役立つ。
直前オブジェクトは、直前のレイヤーに配置されたオブジェクトを模倣するオブジェクト。直前のレイヤーに配置された図形ならば図形、テキストならばテキスト、画像ならば画像、動画ならば動画オブジェクトを模倣する。
そして、こういう状態にする。
上記は、下記のように同じ動画を二つ重ねて表示しているのと同じことになる。
だが、こうするよりも「直前オブジェクト」機能を使用した方が色々とスムーズだしスマートなので、皆さんもとりあえずそうしてほしい。
次にオーバーレイ
さて、直前オブジェクトを置いたら次の段階に進む。このままでは同じ動画を重ねて表示するだけでなんの意味もないからだ。
だが、直前オブジェクトの「合成モード」を「オーバーレイ」にするだけで、一気に映像の色調は変化する。嘘だと思う人こそ試して欲しい。
方法は簡単。下図の部分をクリックするだけだ。
そうすると映像はこうなる。
なんじゃこりゃ! ドギツ!
…と、このようにガラっと色調が変わるのである。オーバーレイを使うと、ざっくり言うとコントラストと彩度が上がり、派手な絵面になる。
オーバーレイの詳しい説明は下記サイトをご覧あれ。
乗算 色が掛け合わされて暗くなります。合成画像の黒い部分は黒のまま、白い部分は透明になります。 スクリーン 色が反転して掛け合わされて明るくなります。
合成画像の黒い部分は透明になり、白い部分は白のままになります。オーバーレイ 「乗算」と「スクリーン」の組み合わせです。明るい部分は明るく、暗い部分は暗く合成されます。
また、こちらのサイトでもわかりやすく解説されている。
→SAI講座 (2017/5リンク切れ)
…とにかく、オーバーレイを使うとコントラストと彩度が上がり、メリハリがはっきりし、あざやかになり、派手になるのである。
ただ、そのままだと派手すぎて使えない場合も多い。上記の画像もそうだろう。
そこで次のステップである。
直前オブジェクトに色調補正&透明度設定
次は、先ほどの直前オブジェクトに色調補正フィルターを適用する。
上図の「+」マークをクリックし、色調補正フィルターを選ぶのだ。
そして、彩度を上図のように思いきって0まで下げてしまう。
そうすると一気に使える感じに引き締まるのである! 嘘だと思う方はもう少し人を信じたほうがいいかも知れない。
直前オブジェクトの彩度を0にした画像がこちらだ!
↓元の色調
元の雰囲気と比べると、ドラマチックに引き締まった印象ではないだろうか? そんなことはない、と言われたらおしまいだが、きっと引き締まったことと思う。
非日常世界を描く映画であれば、色調で違う世界を演出することも重要なのである。ドキュメンタリーならまた違ってくるかも知れないが。
ここまで来たら、カラコレの前段階はほぼ完了。後は微調整である。
直前オブジェクトの「透明度」をいじることで、オーバーレイの効果を調整するのだ(透明度が高いほど、オーバーレイの効果は弱まり、元の動画の色調に近くなっていく)。
私は上記のように、透明度は20%前後にしていることが多い。オーバーレイでコントラストを強めると暗いところが潰れやすいので、映像を引き締める黒潰れを防ぐには透明度20%くらいがちょうどいい(ことが経験上多い)。
ちなみに、透明度20%にするとこうなる。
微妙な差だが、右の人物の顔などが少し明るくなっているのがわかるだろうか。この辺りの微調整は元動画の暗さなどにもよってくるので、都度微調整になる。
この状態の動画を参考までにアップしておく。
さて、それでは前段階が完了したところで、ここからはカラコレのパターン例を紹介していく。
カラコレ(カラーコレクション)の設定例色々!
ここからは「拡張色調補正」というフィルター効果を使用した、カラコレの設定例を紹介していく。参考にしやすいように、拡張色調補正の設定値と、その結果の画像を載せていく。
結果の画像には、新たに下記画像を加える。
↑オーバーレイ+彩度0の直前オブジェクトを適用した状態
実際には私はほかにも色々なフィルターを使っているが、その辺は元動画の状態によって変わるので、これ以上の微調整は個々人で考えて行うのが一番だろう。
カラコレ パターン1
・「拡張色調補正」設定値
・仕上がり
青を減らし、全体を黄色っぽい色合いにしつつ、緑を少し足している。緑っぽくするとフィルムっぽくなるケースも多い。
少し古い雰囲気になる。
カラコレ パターン2
・「拡張色調補正」設定値
・仕上がり
緑を足さずに、より黄色っぽくしたパターン。セピア調のように、これもやはり古ぼけた感じが出ている。
少し黄色が強いので、実際にはここから彩度を更に減らしたり、微調整を行うことになるだろう。
カラコレ パターン3
・「拡張色調補正」設定値
・仕上がり
赤を減らし、すこし緑を加えている。
元の動画にも夜が赤を減らすと血の気が引くのと同じか知らないが、少し凄みを帯びたような迫力が出ることがある。少し冷たい雰囲気も出るが、それ以上にどこか狂気や、異様な空気感が演出される。
個人的には、淡々とした切り離された別の日常…みたいな雰囲気になるようにも思う。
カラコレ パターン4
・「拡張色調補正」設定値
・仕上がり
赤みを減らし、青みを加えた。冷たく、落ち着いた空気感になる。
シュッと引き締まる。
カラコレ パターン5
・「拡張色調補正」設定値
・仕上がり
極端に赤を減らした。病院のホラーシーンなどに合いそうな凄みと、異様な迫力が出ている。
緑の光が当っているようにも見えるので、実験室風にも見える。
カラコレ パターン6
・「拡張色調補正」設定値
・仕上がり
これも赤み減らしシリーズ。クールな狂気が感じられる色合い。少し昔っぽい感じもする。
結構極端な設定値なので、元動画によってはかなり変な色になる可能性も。
カラコレ パターン7
・「拡張色調補正」設定値
・仕上がり
青を大きく足し、緑も足しているが、比較的現実的な色合い。
落ち着いているが、ほどよい映画っぽさが出るように思う。
まとめ
色によって大きく雰囲気が変わる、ということが伝わったかと思う。
元の動画素材によっては、このままの設定値だと全然使えない!ということもあり得るので、細かいところは皆さんにお任せしたい。
カラコレはパターンが決まっているわけではないので、実際にはまだまだそれこそ無限にあるのだが、きりがないのでここで終わらせて頂く。
違いを目立たせるために、多少極端な設定値にしているが、自分の目指す雰囲気に合わせて設定値を参考にしてもらえればと思う。
それでは…カラコレをこれからもよろしくね!!
関連記事
⇒AviUtlのカラコレ・エフェクトで夢&回想シーン風にする方法【プロジェクトファイル配布】