汗をかくのは嫌いではないけれど、運動するのは面倒なモーミンパパです。
おかげさまで、夏痩せしません。夏バテはするのに、食欲減退もしません。揚げ物を頭に思い浮かべるとゲンナリしますが、揚げ物を目の前に差し出されるとガッツリいってしまいます。息子とも揚げ物ばかり食べています。なのに息子は太りません。
食いしん坊は遺伝したようなのに、不公平感があります。年齢の問題もあるでしょうが、私は息子の年齢ですでにポニョになり始めていました。
薄着の夏はポニョが目立つ季節です。他人の視線なんてほぼ浴びることがないおじさんのくせに、過剰な自意識がTシャツ一枚で出歩くことをためらわせ、灼熱地獄の東京砂漠で上にシャツを羽織っている私です。まあ、これには効きすぎの冷房対策という面もありますが。
エコだの、節電だのが騒がれて久しいですが、馬耳冷風のビルや店舗は結構多いですね。アイスコーヒー飲むつもりで入ったのに、注文するまでにからだが冷えてホットコーヒーを注文してしまうこと、ありませんか。私はあります。
喫茶店の場合、長居させないための作戦なのかと勘ぐってしまいたくなります。
それでなんの話かといえば、汗の話でした。(後半に麻婆豆腐のおすすめ店紹介なんかもあります。)
暑気払いの汗かきメシは、カレーもいいけど麻婆豆腐でしょ
これは夏の七不思議に入れてもいいと思いますが、
「暑さ」
で汗をかくのは不快ですが、
「熱さ」
で汗をかくのはむしろ爽快です。
効きすぎ冷房に関係なく、夏こそ熱いお茶を飲めという教えもあります。
だから私は冷やし中華ばかりを食べるのではなく、揚げ物も食べますがそれは今回とは別の話で、夏はよく麻婆豆腐を食べます。夏ではなくとも食べますが、やはり夏が多いです。
以前は夏の汗かき食品といえばカレーだったのですが、正月が
「おせちもいいけどカレーもね」
ならば、夏は
「カレーもいいけど麻婆豆腐もね」
の上下関係を逆転させて、麻婆豆腐が羽柴秀吉から豊臣秀吉に成り上がってしまいました。
麻婆豆腐で暑気払いする二つの理由
理由はふたつ考えられます。
1、加齢問題
ひとつは加齢問題。私はインドカレーも好きですが、最近少し旗色が悪い欧風カレーが大好きなのです。さらさらのインドカレーと違い、欧風はルーがややもったりしています。これが夏にはあまり向いていません。たぶん口内が重たくなり胃にどろっと落ちていく感じが、体力の弱ったからだには負担に思われてしまうのでしょう。
こちらは個人的なもので、若いひとはふふんと鼻で笑って優越感に浸ってください。
2、美味しい麻婆豆腐増加問題
もうひとつは、おいしい麻婆豆腐を出す店が増えたことです。おいしいというか、本格的と呼ぶべきなのでしょうか。これが、いい汗かけるのです。トラック一周全力疾走した気分。あくまで、気分ですが。
しゅわー、です。
炭酸飲料をイッキ飲みしたような、おじさんでも青春な感じ。
青春といえば「甘酸っぱい」が定番ですが、そんな酢豚のようなものではありません。甘さも酸っぱさもない。辛い。
だけど、ただ辛いだけではありません。痺れるのです。
まるで昭和の女学生が銀座ACB(アシベと読みます)でオックスの赤松愛のパフォーマンスを見たときのようと書けば、わかってもらえるでしょうか。無理ですね。古すぎて、私でさえ本当はよく知らないことを比喩として書いてしまいました。
麻婆豆腐に潜む、ホワジャオ(花椒)
具体的にいきましょう。最近の麻婆豆腐には、ホワジャオ(花椒)が入っているのです。ホワジャオ、ホワイ?
おじさんなので、ときどき無性に駄洒落が書きたくなります。
ホワジャオとは中国の四川省などに生育するカホクサンショウのことで、日本の山椒とは同族異種、平たくいえば似てるけど別物です。四川料理には欠かせないものですが、たぶん以前の日本の麻婆豆腐には使われていなかったのでしょう。
入手しにくかったのか、本格的過ぎて口に合わなかったのか。
日本に四川料理、そして麻婆豆腐を広めた陳健民さん(鉄人・陳健一さんのお父さん、あるいは陳健太郎のおじいちゃんのほうが、いまや通りがいいのだろうか)は、こんなことを言ったとか。
「私の中華料理少し嘘がある。でもそれはいい嘘。おいしい嘘」
つまり当時の日本人向けにアレンジしていたのです。食べ慣れた食材を使い、ほどほどの辛さに調節したわけです。その過程で、ホワジャオは省かれたようです。
子から孫へ代替わりしようとするだけの時間が流れるなかで、日本人の舌も変化成長してホワジャオをたのしめるようになったのです。そこでホワジャオを使った、あるいはたっぷり使った麻婆豆腐を出す店がたくさん出てきました。
私の舌も、ホワジャオが大好きです。
魅惑の花椒(ホワジャオ)
その味を一口で言えば、まさに痺れです。しゅわー、です。のち、ぴりぴりです。
舌の上の静電気摩擦放電であり、舌の上の小鬼による集団やり投げであり、舌の上の日本三大花火大会同時開催であります。どんどん、わからなくなりました、すみません。
とにかくホワジャオの刺激が、以前より親しんでいた唐辛子の辛さと相俟って爽快な汗の噴出を促してくれるのです。
オックスでいえば、野口ヒデトのボーカルと赤松愛のオルガンが相俟って女学生を失神状態に導くわけです。謝ってすぐに、もっとわからない比喩に戻ってしまいました。ついでながら、オックスの「スワンの涙」はいま聴いても名曲ですが、麻婆豆腐的なのは「オックス・クライ」という曲です。
失神などと書きましたが、私は激辛マニアではありません。息子は「中本」に足を運んでいるようですが、私は行ったこともなければ行きたいとも思わないのですが、辛くないタンメンがあるのならそれは気になります。
※息子(管理人)注釈:私は中本は経験で行ったけど体がついていかないので好きではありません…。まずいわけではなかったですが。
タンメンについては季節が来たら存分に書かせてもらいますが、いまは夏です。麻婆豆腐です。ホワジャオです。
まあまあ食べ歩いている私にとっての、ベスト麻婆豆腐を出す店を紹介します。本当は教えたくない、なんて枕詞がよくついたりしますが、私はそんなケチではありません。金銭的にケチなだけの人間です。
モーミンパパのベスト麻婆豆腐、お勧め店まとめ
シンプル・イズ・ベスト 西荻窪「まつもと」
西荻窪の「まつもと」です。
西荻窪には他に麻婆豆腐が有名な店があっておいしいのですが、そちらよりも私はここの奇を衒わずに上品な麻婆豆腐が好きです。シンプル・イズ・ベストです。
注文すると「辛いですが、大丈夫ですか」と確認されますが、西荻窪マダム向けのエクスキューズだと思います。ゆっくりと汗が出てくるほどの辛さです。いまは知りませんが、以前は初めて頼むひとにはそのままの辛さで食べてもらい、二度目から辛さのオーダーに応じていました。
一度、味が崩れないなかで最高の辛さをお願いして完食したら、しばらくは黙っていてもその辛さで提供されて、あるとき恥を忍んで「今日は少し辛いくらいで」とレベルを戻してもらいました。
息子を含む激辛マニアのかたはふふんと鼻で笑ってくださって結構ですが、それぞれの舌と相談して折り合いのついた辛さで食べるのが麻婆豆腐の正しい食べ方だと思います。
※息子(管理人)注釈:見解の相違というべきか、私は激辛マニアではなくただ中本に行って苦しんだもやし男なのであります。
おまけ話
このあいだ、新宿ゴールデン街で「ビッグリバー」という店を営む大川ママ(店名そのまんまです)を連れていきました。ゴールデン街にはそこともう一軒、麻婆豆腐を出す店があるらしく、負けたくないと研究を重ねているのだそうです。
大川ママの麻婆豆腐もおいしいので、興味のあるかたはそちらもどうぞ。
有名人気店! 四谷三丁目「峨眉山」
有名店で夏向きというなら、四谷三丁目の「峨眉山」がいいです。ここは豆鼓を使っていないらしいです。たしかに奥行きにはやや欠けるのですが、そのぶん軽い口当たりで箸ならぬスプーンが進みます。
辛さが選べるのも、いいですね。普通、中辛、大辛、激辛の四種があります。
私は中辛にしています。というのは、ホワジャオは自分でかけ足すことができるように添えられてくるからです。
辛さというか、痺れを自分好みに調節することで気分や体調に合わせるわけです。激辛よりしゅわーに重点を置いている私としては、この提供のしかたはうれしいところです。
豆腐は最初からぐずぐずに崩してあります。見た目はそのぶんあれです、最近の言い方だとインスタ映えしないとなりますが、このほうが豆腐に味が絡みますからインスタ女子ではないブログおじさんとしては問題ありません。
見た目の気取りのなさも含めて、(とくに夏は)毎日食べても飽きない麻婆豆腐だと思います。
有名な店ばかり書いていてもしょうがないので、ご近所のひと以外まず知らないだろうけどおいしい店に触れます。
隠れた名店。大泉学園「八」
大泉学園、といってもそこから歩いて15分くらいかかりそうだし、バスだと停留所みっつほど離れた場所にある「八」です。
なんだかしもた屋で気難しい親父がやっている居酒屋みたいな店名ですが、ビルの一階にあるこぎれいな店です。ただ駅から遠い。私はたまたまフェイスブックでつながっているご近所のひとに教えてもらいましたが、でないとまず存在すら知ることのなかった店です。
こう書いてはなんですが、23区のはずれにさえこんなおいしい麻婆豆腐を出す店があるんだと驚きました。
セットの力
ランチはセットで提供されているのですが、そのバランスもいいのです。食べ始めは適度に辛く適度に痺れたまじめにおいしく今時な感じにまとめた麻婆豆腐に思えるのですが、徐々に味噌の濃い味が勝ってきます。普通だとこれが舌をだれさせてしまうのですが、そこでセットが活躍するわけです。
まずスープが薄味で舌を洗ってくれます。小鉢のタケノコとザーサイときゅうりの和え物がまた味蕾をしゃんとしてくれるのです。
だから最後まで飽きずにむしゃむしゃ食べられるのです。しかもデザートに杏仁豆腐があるので、後口はすっきり爽やかにさえなってしまいます。
わざわざ行く価値もあるとは思いますが、たいていのひとにとってわざわざ行くのは面倒な場所なので、みなさんも「八」に負けない隠れ名店を探してみてください。ご一報、お待ちします。
モーミンパパのひとこと
ちなみに麻婆豆腐は、俳句の季語にはなっていませんでした。するなら、やっぱり夏だと思いますが。
では、やや貧乏臭く、季語を入れたのに川柳みたいな駄句を一句。
土用丑
山椒が香る
熱豆腐
麻婆豆腐は書きたい店がまだまだあるので、そのうちにまた。