自主制作映画を撮るという、面白がられることは多いけど濃い協力者はなかなか現れないそんな趣味をしているブログ管理人でございます。そしてこれはたまに書く、自主映画制作記的な記事です。
撮り始めたのは2013年頃からですが、そこから毎回新たなチャレンジをしてきたつもりです。元々の素人度が半端ではないので、2016年現在がものすごいレベルかというとそうでもないんですがね、とにかく新しいことをやるのは面白い。(もちろん、一つを極めるのも楽しい)
というわけで、先日、クロマキー合成ができるスタジオを借りて、合成用の動画を撮ってきました!
これは二年ほど前にも一度、「主人公が本で空を飛ぶシーン」の合成でやってるので初ではないんですが、そのときより本格的にやってきました。照明も自分なりにちゃんとやったので、気持ち的には新たな挑戦でした。
こんな感じの粗いギャグですな。空飛ぶシーンの動画はこちら。空飛ぶシーンから再生されるようにしてあります。
…まあ、そんな前置きはさておき、そのときの様子と、編集中の状態を紹介します。結構うまくいってますよ。
ちなみに、今までの制作記もここからたどれます。
クロマキー合成スタジオでニュース風動画を撮影
別にクロマキー合成専門のスタジオというわけでもないんですが、池袋にある格安スタジオで撮影をしてきました。本で空を飛ぶときは渋谷の激安スタジオで一時間だけ借りました…が、そのときに結構時間がきつかったので、今回は2時間借りました。
スタジオ名は「STUDIO ARISE│スタジオアライズ」です。大々的に紹介してみんなが押し掛けると私が予約できなくて困ってしまうので、深くは紹介しません。とりあえず安くて機材がそろっていて、予約も比較的取りやすい良いスタジオです。
私が借りたときは2時間6000円でした。最低4時間40000円から! みたいなとこも多いので非常に助かりますね。
中の雰囲気は…
こんな感じです。ここで撮影をしました。(これは機材を設置し終わった後です。)上の写真のライトが謎な配置になってる理由は後述。素人の工夫に過ぎません。
緑色の布はグリーンバックだとかクロマキーバックだとか言います。緑色を背景に撮影して、編集時に緑色を透過させるわけです。なぜ緑かというと、人肌と真逆の色(補色)だから処理がしやすいのです。
こちらで、ニュースを読むアナウンサーの動画を撮り、後で編集ソフトで背景をニューススタジオにしたり、テロップをつけてニュース番組っぽくするわけです。
先に完成形を見せてしまうと、こんな風になります。役者の顔は出しても多分平気なのですが、一応隠してます。
そして最後はこれを更に都会の大型スクリーンにはめ込んでしまうというわけです。
難しかった合成撮影
恐らく詳しい人からすればなんで照明一つこっち向いてんねん!とか、照明近いやろ!とか、遠すぎやろ!とか、なんで顔が変な本になってんねん!よく見たらこの本、このブログのゲストライターが書いてる『抜本的少子化対策』という問題小説じゃねえか!
…などなどと、いろいろと突っ込みが来ることでしょうが、気にしません。色々あった末にこれがベストとなったのですから。ずっとこれで撮っていたわけでもありませんしな。
難しさその① 迫り来る”フリッカー現象”
このスタジオで一つ困ったこととして、私のカメラとの相性なのかわかりませんが、フリッカー現象が起きてしまうことがありました。これは誤算でした。
ちょっと小難しい事を書きますが、家庭用電源には東日本が「50ヘルツ」、西日本が「60ヘルツ」となっています。
蛍光灯というのは、このヘルツに大きく関係し、東日本では1秒間に100回、西日本では1秒間に120回「点滅」をしているのです。
そしてシャッタースピードを、東日本で1/100秒以上、西日本で1/120秒以上早く設定し撮影すると、このような現象が起こってしまうのです。
つまり、点滅してる蛍光灯の「光っている時」「消えている時」の間を縫って撮影しちゃっているという事なんです。
これを「フリッカー現象」と呼びます。
普通、フリッカー現象はシャッタースピードを変えると解消されるのですが、なぜだかされず…天井の蛍光灯を消して照明だけで撮るか、天井の照明に機材の照明を当てて光を混ぜてごまかすかしかありませんでした。
まあ、最終的にはそれらの方法で綺麗に撮れたんですけどね。
難しさ② 決して消えることのない”影”
次に困るのがこれ。こちらはスタジオのせいではありません。
少し上の方で「合成する際は緑色を透過する」…といいましたが、そのためには緑の布になるべく影が出ないようにしなくてはなりません。そうしないと明るいところと影のところで色に差が出てしまい、綺麗に抜けないのです。
そう思い、ライトを色々使い、位置を移動しまくるのですが、これがね、
なかなか消えない
。
ほんとに。消えないね。まず、じゃあ照明使わなきゃいいじゃん、という考えもあるかも知れませんが、照明なしだと暗くて撮った映像にノイズがたくさん出て画質が粗くなります。そして、役者も照明をちゃんと当てたほうが綺麗に、そしてかっこよく映るのです。
屋外の時は自主映画で照明を使うのはかなり厳しいですが、室内、それもスタジオ撮影なら照明を使わない手はありません。なので、照明は使うのです。
まず、緑の布に均一に光を当てて、影が出ないようにします。なおかつ、役者にも照明を当てて綺麗に映します。輪郭を際立たせたり、優しい感じに明るくしたりと色々やります。
影が出てますね。これをうまく消すのが非常に難しかった。最終的には消せたけど偶然に近い。
一応、役者にあてる照明は「キーライト、フィルライト、バックライト」という3灯照明が基本なのですが、バックライトは今回はやりませんでした。置くスペースの問題と、ニュース番組ってバックライトないような気がなんとなくしたからです。
3灯照明についてはこちらの外部記事が参考になります。ここで語るには長すぎます。
⇒参考:3灯照明の基本と応用
照明は今まで手が回らず、ほぼやらずに来たのですが、奥が深くて困ります。カラコレである程度はごまかせますが、本格感を出すには最後は照明がないと厳しいな、と最近気づきました。
ちなみに裏話。撮影後にスタジオの人にコツを聞いたら「最近は編集ソフトが凄いから影あっても消えますよ」とのことでした。素人の私が頭でっかちで、プロは意外とゆるいのかも、と思った瞬間でもあります。
難しさ③ 襲い掛かる”まぶしさ”
照明を色々と工夫していると、たまに緑色の影が消えて、なおかつ役者にもちゃんと照明が当たるような配置があるのですが、それが大抵役者にとってはめちゃくちゃ「まぶしい」!
我慢してくれよ…とか思うかもしれませんが、いざ自分がその場に立つ(座る)とかなりまぶしい。これはきつい!
なので、苦肉の策として、正しいのかわかりませんが、
この写真の手前の二つのライトのように、ライトを被写体からめちゃくちゃ離したのであります。
そして真ん中のライトがこちらを向いてるのは、フリッカー現象を防ぐために上の蛍光灯を消すと明るさが足りず、反対側の壁をレフ板のように使って、まぶしくないように少しでも明るくするためです。めちゃくちゃな状況ですが、色々やりました。照明むずい。
ただ、この後にもっと良い方法が見つかりまして、真ん中のライトを役者に向けつつ、ライトの前に白いアンブレラ(傘)を置くと光が弱まって拡散してくれ、明るくなおかつまぶしくもなく、役者にも綺麗に光が当たる…ということがわかったのです。常識なんですかね。
これがスタジオにあります。
レフ板も置いてあったのですが、組み立て方がわからなかったので使いませんでした。
そんなわけで、三つの難しさをなんとか克服して、なんやかんやで撮影を終えることができましたとさ。
撮影した素材を合成してニュース風に…
そして、撮影した素材がこちら。
影が一切ありませんね! ちょっと暗い感じはありますが、今回の使用用途だとほぼ問題ありませんでした。テレビ内の映像っぽくするので、かなり粗くならない限りは違和感ありません。
上の素材の緑色部分を透過させて、ニューススタジオ風の背景を合成すると…
こうなるのです。Adobe After Effectsという定番ソフトの「Keylite」というエフェクトを使用して合成しています。
素材はARCHITECT9というところ?の背景素材を使用。無料素材もあれば、有料背景素材を売ったりもしてる様子。
「ARCHITECT9」有料背景素材→http://shop.freevirtualset.com
※リンクを貼らないといけない規約っぽいので貼ってます。
それにしてもどうでしょう、かなり綺麗に合成できてるのではないでしょうか。(地味に背景のテレビモニタの中の「〇〇逮捕」みたいな文字も合成ではめ込んでます。こちらはただ上から貼っただけですが。)
そしてこれを更に、都会の大型スクリーンにはめ込むことで、なんだか壮大な事件っぽさを出すのが今回の目的というわけです。
大型スクリーンにはめ込んだ
これもまたAdobe After Effectsというソフトを使用します。動画編集・動画加工の世界では定番中の定番ソフトなのです。
深い説明はしませんが、こちらのモーショントラッキングという機能の「遠近コーナーピン」というのを用い、大型スクリーンの四隅を指定することで画面はめ込みが完成します。
こんな感じです。なんか凄そうですよね。+のところでスクリーンの四隅を指定すると、自動でそこにはめ込まれるように追従してくれる機能です。
自動追従といっても実際にはここから細かい位置調整はします。(更にテレビ画面風に見せるために走査線を入れたりもしました。)
ちなみに似た機能で「CC Power Pin」という機能もありますが、こちらは自動で追従はしません。
「CC Power Pin」はこんな感じ。
とにかく、モーショントラッキングの「遠近コーナーピン」は便利です。手振れが少なければかなり素晴らしい制度で画面はめ込みができます。逆に言うと、手振れがあるとだめですね。
モーショントラッキングのまとめ記事も一応書いてるのでよかったら読んでください。さらに、テレビ画面っぽくするための走査線の入れ方の記事も書いてるのでどうぞ。
まとめ
というわけで、
スタジオを2時間借りて合成したらこんなのができる話でした。ちなみに、ニュース内の文章は仮で入れてるだけです。
さて、この後はまた編集! この手の合成はやってて楽しいですね。
ではまた。
今までの色々な自主映画制作記。
映画製作用にAfter Effectsでスマホハッキング風の動画を作った【自主映画制作記】