モーミンパパ 小説・エッセイ等

『おにたろう』絵のない絵本シリーズ1

2018年10月24日

ご挨拶

ご無沙汰のモーミンパパです。

考えるところあり、というか、正直いままでの書き方がたのしくなくなってしまい、しばらくお休みしていました。

で、まあ、復活して「帰ってきたモーミンパパ」となります。

「モーミンパパジャック」と呼んでくれても構いません。

わからんひとは、気にしないで読み進んでください。

あまり読者に親切にしすぎず、筆のおもむくままに書きたいことを書いていくのが、「帰ってきた」あるいは「ジャック」の方針です。

だからいままでのように「飲食」について書くとは限りません。

むしろ別テーマが多いかも。

もちろん、相変わらずムシャムシャ食べまくっていて、ネタは腹の脂肪と同じくらい溜まってはいますが。

 

絵のない絵本とは

そんなわけで、再開第一弾は「絵のない絵本」であります。

桃太郎の後日譚みたいなものを、鬼の立場で描いてみました。

桃太郎は日本昔話の代表でありながら、好戦的だとか、侵略戦争の片棒担いだとか、評判悪かったりもします。ぼくはそんな難しくは考えませんが、子供の頃よりひとつだけ疑問を持っていました。

鬼の財宝を奪ったら、桃太郎も同罪ではないのか。

育ててもらったおじいさんとおばあさんにあげたって、略奪品には違いありません。

鬼も鬼だが、桃太郎も桃太郎。

それでいいのか。

だったら、どうすればよかったのか。

元の持ち主に返して歩いてもいいし、本来はそうすべきでしょうが、それって話としてあんまり面白くないし、行為としては面倒だ。

だったら、こんなのはどうですか。

と、書いてみました。

絵を描くかわりに、絵に相当する場面説明を()内に字で書いてあります。


 おにたろう-その後の鬼とももたろう-

1

(荒波が砕ける海に浮かぶ岩だらけの島。島の上には三匹の鬼の姿)

 

おれはおにたろう。

おにがしまという、はなれこじまでうまれそだった。

むかしはここも、たくさんのおにがすんでにぎわっていたらしい。

でもいまは、おれのとうちゃんとかあちゃんとおれしかいない。

 

 

2

(荒涼とした島に建つぼろ小屋の前で、金棒片手に固い決意を浮かべるおにたろうに、黙って芋饅頭を差し出す母鬼。横には怖い表情でいちご大福を頬張る父鬼)

 

おおきくなったので、おれはとうちゃんとかあちゃんにつげた。

「しまをでて、みんなのかたきをうってくる」

たびだつおれに、かあちゃんはいもまんじゅうをたくさんもたせてくれた。

 

 

3

(遠くに海。海のかなたにちいさな鬼ヶ島。浜が草原になったあたりで、猿と向き合うおにたろう。猿は片手に長い棒を持っている。猿は芋饅頭をもらってうれしそう)

 

りくにあがると、さいしょにさるとであった。

「おにたろうさん、おこしにつけたいもまんじゅう、ひとつわたしにくださいな」

「ももたろうのせいばつについていくならあげよう」

「いくよ。おれのとうちゃんはももたろうのけらいになったけど、あんたたちからとりあげたたからものをひとつもわけてくれなかった」

さるはいもまんじゅうをむしゃむしゃたべた。

「うまい、きびだんごなんかより、ずっとうまい」

 

 

4

(木立の茂る里山の麓で、豚と向き合うおにたろう。うしろには猿がまだ芋饅頭を食べながら立っている。豚は片手に刃先の尖った鍬を持っている。豚は芋饅頭をもらってうれしそう)

 

つぎにぶたとであった。

「いもまんじゅう、わしにもくれ。ぶひー」

「ももたろうせいばつについていくならあげよう」

「いくよ。おれのとうちゃんはももたろうからきびだんごをもらえなかった。ぶたなんか、やくにたたないって」

ぶたはいもまんじゅうをむしゃむしゃたべた。

「うまい。きびだんごなんかより、ずっとうまいにちがいない」

 

 

5

(森のなかを流れる川の淵で、河童と向き合うおにたろう。うしろには芋饅頭を食べつづける猿と豚が立っている。河童は半月型の刃がついた槍を持っている。河童は芋饅頭をもらってうれしそう)

 

つぎにかっぱとであった。

「いもまんじゅう、くいてー」

「ももたろうのせいばつにいくならあげよう」

「いくよ。おれのとうちゃんはかわでおよいでいるとき、ももたろうがはいっていたおおきなももにぶつかっておおけがをしたんだ」

かっぱはいもまんじゅうをむしゃむしゃたべた。

「うまい。きゅうりもうまいが、これもちょーうまい」

 

 

6

(きれいに舗装され、植樹もされた道の彼方、険しく尖った山々を背景に、安土桃山城のような屋敷が見える。それを指さすおにたろう。猿、豚、河童も芋饅頭を口にしたまま、そちらへ顔を向ける)

 

さんびきのなかまをつれたおれは、やまのおくへとのぼっていった。

やまはけわしくなるのに、みちはひろくきれいになっていった。

そのさきに、おしろのようなやしきがあった。

「あれだ」

 

 

7

(立派な屋敷の門めがけて駆けるおにたろう。その顔はまさに鬼のよう。猿、豚、河童も怖い顔つきであとを追う)

 

おれはあたまにちがのぼって、やしきにとつげきした。

さるとぶたとかっぱもつづいた。

「ももたろう、でてこい!」

 

 

8

(門の中、屋敷の前庭になったところで、宴会が開かれている。美女に囲まれてにやけた老人に、詰め寄るおにたろう。老人は平然としているが、美女たちは驚き慌てている)

 

もんをつきやぶると、くさりかけのももみたいなぶよぶよしたおとこが、びじんにかこまれて、ごちそうをむしゃむしゃむしゃむしゃたべちらかしていた。

「おい、ももたろうはどこだ」

おとこはごちそうをくちにしたままもぐもぐとこたえた。

「とっくにしんだよ」

 

9

(全身の力が抜けるおにたろうに、美人たちがすがりついてくる。羨ましそうな猿、豚、河童。老人は苦虫をかみつぶしたような顔になる)

 

おれはがっくりきた。

「しんだのか。おれのとうちゃんやなかまたちをひどいめにあわせて、たからものをうばっていったももたろうは、もういないのか。かたきうちをするために、ここまできたってのに」

そのとき、びじんのひとりがおれにかけよってきた。

「うそです。このじいさんがももたろうです。わたしたちはふもとのむらからさらわれてきました。たすけてください」

ほかのびじんもおれにすがりついてきた。

 

 

10

(さっきまでとは違って生気を取り戻し、憎々しい顔になった老人が叫ぶ。同時に屋敷からたくさんの犬がなだれ出てくる。美人たちを庇うように武器を構えるおにたろう、豚、河童。猿だけは犬を見てうんざりした顔になる)

 

「ばれたか。ものども、やっちまえ」

ももたろうがさけぶと、やしきからいぬのへいたいがぞろぞろでてきた。

さるがあきれた。

「おまえたち、おにたいじにいったいぬのこどもたちか。なんでまだ、こんなやつのけらいになっているんだ」

いぬのいっぴきがこたえた。

「すきでやってるんじゃない。さるやきじとちがって、いぬはひとにたよらないといきていけないんだ」

「ぐずぐずするな。やっつけたら、とくべつにきびだんごをふたつ、やるぞ」

 

 

11

(たくさんの芋饅頭が投げられると、ぐるりとおにたろうたちを囲んでいた犬たちは芋饅頭めがけて飛びついた。それを見て悔しがるももたろう)

 

おれもまけずにさけんだ。

「ケチなやつだ。おれのみかたになれば、いもまんじゅうをありったけやるぞ」

すかさずサルがさけんだ。

「ウキキキキーッ!」

ぶたもさけんだ。

「ブヒヒヒヒーッ!」

かっぱもさけんだ。

「カパパパパーッ!」

いぬたちはいもまんじゅうをひろいながら、いちもくさんににげていった。

 

 

12

(犬たちは芋饅頭をかじりながら、門から外へ逃げていく。それを追いかける猿、豚、河童。ももたろうは鬼よりも鬼の形相になって、刀を振りかざすが、先におにたろうの金棒がぶよぶよした腹にめり込んだ。息の飲んで見守る美人たち)

 

「うぬぬぬ」

ももたろうはかたなをぬいて、おれにおそいかかってきた。

おれはてにしたかなぼうをふりまわした。

ボコッ!

しっかりとてごたえがあり、ももたろうはばったりたおれた。

 

 

13

(地面に倒れたももたろうを見下ろす、おにたろうたち。うしろから美人たちも覗いている。ももたろうは完全に目をまわしている)

 

さるがいった。「むかしはつよかったのに」

ぶたがいった。「なまけたくらしをしてたんだな」

かっぱがいった。「これからはきゅうりをたべろ」

おれはいった。「たからものはもらっていく」

 

 

14

(宝物を積んだ荷車を猿、豚、河童が引いて門を出る。手を振って見送る美人たち。おにたろうはさわやかな顔をしている)

 

やしきをでたところで、おれはさんびきとわかれるつもりだった。

「てつだってくれて、ありがとう。すきなたからものをもっていってくれ」

さんびきはたずねた。

「おにたろうはどうするんだ」

「おにがしまにかえるのか」

「たからものをおみやげにして」

 

 

15

(険しい山々を指さすおにたろう。山には怪しげな雲がたなびいている。それぞれの武器を差し上げて、おにたろうと行動を共にすることを誓う猿、豚、河童)

 

おれはくびをふった。

「それじゃ、ももたろうとおなじじゃないか」

おれはおにがしまとははんたいのほうこうをゆびさした。

「ももたろうをうんだももは、かわからながれてきた。だとしたら、かわをさかのぼってもものできたばしょをさがす」

さんびきはかおをみあわせた。

「わかっている。やまのさきにはおによりこわいかみさまがいるんだろう。あってやろうじゃないか」

さんびきはこえをそろえた。

「おれたちもいくぜ」

 

 

16

(険しい山道を荷車を引いて進む、愉しそうなおにたろうたち。山の斜面の上では、妖怪のようなものが物陰からそっとおにたろうたちの様子を窺っている)

 

おれはおにたろう。なかまのさるとぶたとかっぱといっしょに、けわしいやまをめざしてたびをつづける。

 

 まとめ

いかがでしたか。

最後は西遊記になってしまいました。

まあ、途中からそうなんですが。

余計な解説は避けますが、ぼくはへそ曲がりの子どもだったみたいで、神様とか仏様とか正義の味方とかを、なんとなく胡散臭く思っていたのです。

いまもそうです。

正義だか悪だかわからない脳改造を免れたショッカー怪人「仮面ライダー」は大好きですが、M78星雲という桃源郷からやってきた神様「ウルトラマン」は実はそんなでもありません。

だから「帰ってきたモーミンパパ」より、やっぱり「モーミンパパ新1号」がいいです。

はい、読み飛ばしてください。

とにかく、こんな感じでやっていきたいと思うんで、よろしくです。