カレーと揚げ物という高カロリー×高カロリー食をしながら、なんとかダイエットできないかと思案するモーミンパパです。おまけに白メシもぱくついてから、いかんいかんとサラダにマヨネーズたっぷりかけて食べています。愚か者です。
さて、ここのところ愚か者なりに考えていることがあります。
前から薄々感じてはいたのですが、確信に変えられるほどの実験の積み重ねがなく、論文にまとめずにきたことです。ちなみに論文というのは、このブログのことです。おおげさで恐縮ですが、それくらいの気概を持って書かせてもらいます。
えへん。(注目を集めるための空咳です)
カツカレー及びメンチカツカレーに関する論文(と、店の紹介)
私の実証実験によりますと、
カツカレーにおいては、トンカツよりもメンチカツのほうが、カレーとの相性がよろしい
との結果を得ましたので、ここに報告致します。
カツカレーのトンカツはあまり厚くない方がいい論
カツカレーのトンカツは、カツ丼のトンカツとともに、一般的なトンカツの場合と異なり、あまり厚くないほうがおいしいとの私見をかつてこのブログで綴りました。
これは平均的日本人の生涯カツカレー食体験回数の優に三倍は食べた(私調べ)のちに得た、非常に信頼性の高いものです。
カツが厚くなるほど、トンカツとしての存在感が増してしまい、それを愉しむためにはカレーが邪魔になってしまうのです。
最近は上ロースや特ロースといった有り難い豚肉を揚げたものを、カツカレーのトンカツとして使用している店も見かけます。そうした店では、お客さんのなかには心得ているひとがいて、カツカレーを注文したのに、トンカツは塩で食べて、カレーはカレーとして食べていたりします。トンカツは文句なくおいしい。カレーもおいしい。としても、これでおいしいカツカレーと呼べるでしょうか。
トンカツ塩・ソース論
実際、私も全部ではないですが、トンカツの一部をまず塩で食べてから、カレーのルーと混ぜて食べた経験があります。そのとき思ったのは、わざわざカツカレーにすることはなかったな、です。
最近、トンカツの有名店には何種類かの塩が卓上に用意されている店が珍しくありませんし、「最初は塩でどうぞ」「できれば塩でお召し上がりください」「最後のひと切れはソースでどうぞ」などと言われることがあります。
↓息子が書いたトンカツ記事。ここも塩がうまい。
豚の肉がおいしくなれば、主張の強いトンカツソースはせっかくの味をわからなくしてしまうというわけです。以前のトンカツ屋といえば、ソース自慢の店がたくさんありました。甘口と辛口、ふたつのソースをそろえた店も多かったです。そこにトンカツ屋の工夫があったのです。
限界のある豚の肉質を、いかにソースで高めるか。
それが豚の肉質に限界がなくなってしまったので、ソースでごまかすことなく、肉の味そのものを噛み締めてもらいたくなって、よりシンプルな塩が調味料としてめきめき頭角を現したわけです。
トンカツソースも濃厚ですが、カレーはソースとして考えればトンカツソース以上に個性的でありスパイシーであり肉に絡みつきます。
つまり、肉の味をわからなくしてしまうのです。
たぶん、そこに存在意義があってカツカレーは普及したのだと思われます。
ぶっちゃければ、たいしたことない豚肉を揚げてボリュームをつけて、カレーと一緒に肉の味をわかんなくして食べさせて、お腹いっぱいの満足感を与える。
カツカレーは学生さんの食べ物であり、立て万国の労働者の食べ物を志向していたのだから、それで正しかったのです。
また肉の味をわからなくするには、カツを薄く仕上げるのが手っ取り早い方法だったわけです。
だから私は、カツカレーのトンカツは薄いほうがいいとしたわけです。
薄くても肉の塊
しかし、どんなに薄くしても肉の塊は肉の塊です。
いかにカレーが絡みつこうと、奥歯で噛んだときに肉としての味は出てきます。それはカレーの味を弱めます。
その点、メンチカツとはミンチであり、つまりは挽き肉を揚げたものです。肉の塊ではありません。肉の細切れの細切れの細切れです。欠片を集めてくっつけたものです。
いくらぎゅうぎゅうくっつけようと、欠片と欠片のあいだには隙間が残ります。そこにカレーが浸み込んでいくわけです。結果、カツとカレーが一体化するわけです。混然一体となって、ボリューミーなうまさとなって胃の腑に落ちていくのです。
トンカツよりメンチのカツカレーの優位性は明らかです。
なのに、なぜ今日まで私はこの厳然たる事実を主張しなかったのか。それは実際には、メンチカツカレーをメニューに載せている店がとても少なく、あまり食べる機会に恵まれなかったからです。
しかし私はめげずにがんばってみました。
西武新宿線 鷺ノ宮駅「うえの」
西武新宿線の鷺ノ宮駅に「うえの」というカレー屋さんがあります。地元では人気の高い、家庭のカレーをブラッシュアップしたような、癖が少ないぶん毎日でも食べられるおいしさのカレーを出すお店です。
ここにはロースカツカレーとメンチカツカレーがあります。
私は日を置かずに通い、ふたつを食べ比べてみたのです。
まずはロースカツカレーです。
ロースカツカレー
ご覧の通り、わたしの主張と合致する薄いトンカツを使っています。それでも、噛めば豚肉の味はわかります。カレーとカツが分離しているようなことはありません。それでもカツを食べているときはカツを食べていて、カツのないルーだけ食べているときはカレーを食べているという、違いははっきりと意識できます。
それが必ずしも悪いわけでもないのです。トンカツ食べた。カレー食べた。この繰り返しの食事もありですし、十分おいしさと満足を得られます。
ただ、メンチカツカレーも食べてみると、です。
メンチカツカレー
こちらがメンチカツカレーです。ロースカツもメンチカツも、こちらは揚げたてを載せてくれます。
半分に切られたのが二枚で計四枚。この切り口から、カレーが毛細管現象によってメンチの隙間にひたひたと入り込んでいきます。
噛めば、じゅる。染み出た脂を纏った細切れ肉とカレーのルーが混ざり合ったものが、口下の上を覆っていきます。まさにメンチとカレーが一体となって攻め込んでくるのです。
だったら最初から豚小間をぶちこんだカレーでいいではないかとの意見もあるかもしれませんが、それとはまったく別なのです。カツという衣にくるまれたひとつの塊にいったんまとめられて、おいしさも閉じ込められたものが、カレーによってほぐれて己のおいしさをカレーのおいしさのなかへ解放しているから格別なのです。
この食べ比べによって、トンカツの肉々しさを味わいたいときは別として、カレーとしての完成度とボリュームを合わせて求めるならメンチカツカレーであると確信することができたのです。
まだ続く論文
しかし、ここで終わっては優れた論文とはなりません。
よその店のメンチカツカレーもおいしいことがわからなければ、単に「うえの」のメンチカツカレーがおいしいで終わってしまいかねません。
上野駅 「台栄」
そこで上野に向かいました。ここには「台栄」というキッチンがあります。台東区で栄えるという意味らしいです。店名こそ違いますが、ここは明らかに「南海」の流れを汲む店です。
↓またもや息子(実はブログ管理人)が書いた記事
メニューを見れば、わかります。カレーを見てもわかります。黒いです。ただしここには、あまり「南海」を名乗る店で見かけないメンチカツカレーがあるのです。
「南海」といえば、まさに学生さんや立て万国の労働者のためのキッチンです。そこの流れを汲む店のカレーにうまく混ざり合うなら、メンチカツの素晴らしさが証明されたことになるでしょう。
はい、こちらです。
小麦粉っぽいとろみのあるルーには、一切具材はありません。でん、とてっぺんに置かれた丸いメンチをほぐして、このルーに浸してから口に入れます。しっかりミンチされた肉とほどよいタマネギで構成されたメンチカツは、ルーをよく浸み込ませてくれます。
まさに一体となってくれます。「南海」名物といっていいカツカレーもいいですが、なぜ「南海」にはメンチカツカレーがないんだと首をぐりんとひねらざるを得ない、元気の出そうなおいしさです。噛み応えこそありませんが、肉を食べている感もあります。挽き肉の塊、あなどるべからず。
これでほぼよし、なのですが気持ちは論文なので念には念を入れます。
五反田のキッチン「スワチカ」でメンチカツカレーの優位性を完璧にしたいと思います。
五反田のキッチン「スワチカ」
こちら、不思議な店名は戦前売っていたカレー粉の名前だそうです。そこからわかるように、キッチンですが売りはカレーです。と、同時に、こちらの人気商品はメンチカツなのです。ふたつを合わせれば、メンチカツカレーの出来上がりです。
どうぞ、こうなります。
カレーのかかったメンチカツには、包丁が入れられています。そんなに大きくはありませんが、それを補うかのように豚の角煮みたいな塊がふたつカレーに浸っています。これでボリュームだけでなく、メンチカツ唯一の弱点である肉を食べてる噛み応えも味わえてしまうのです。
カレーはほどよく辛さが効いています。
そのルーをすでにたっぷりに浸み込まされたメンチカツにかぶりつけば、まさに混然一体の至福世界が口のなかいっぱいに広がります。うまいです。私が過去食べたカツカレーのなかで、カツだけ、カレーだけでなく、ふたつを合わせた出来としては文句なく一番です。
モーミンパパのまとめ
メンチカツカレーがメニューにある店は少ないです。そんなものがあることを知らないひともいると思います。しかしトンカツのカツカレーではどんなに薄い肉を使っても出せないカツとルーが溶けあうおいしさがある料理なのです。
ここに紹介した三店はどれもおすすめですが、みなさんも行動範囲のなかでメンチカツカレーを提供する店を探し出して、その相性の良さを確かめてください。
私の主張が嘘ではなく、この論文がB級グルメ学会に大きな波紋を投げかけるものであることを理解していただけるものと思います。
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