天下。
その意味を見てみると、
天が覆っている下の所。
全世界。「―晴れて」(世間をはばかる必要なく、公然と)
全国。「―をねらう」(全国の統治権を得ようとする)
実権をにぎって思うままにふるまうこと。「―の横綱」
とある。
では、「天下一品」とは。
【天下一品】
天下一の物。天下一であること。
だそうだ。
では「天下一」とはなんなのかというと、
【天下一】
天下に並ぶものがないほど、すぐれていること。全世界で第一等。
とある。
ちなみに「一品」とは
【一品】
一つの品。ひとしな- 最もすぐれた品。絶品。逸品。
とのことだ。
一品だけでも「最もすぐれた品」という意味があるのである。
つまり、天下一品というのは、
「実権をにぎって思うままにふるまうひとしな」のことである。
…はずがなく、
そして、「全国のひとしな」であるわけもなく…
「全世界で最も優れた絶品」のことである。
前置きを長くしてみた。
今回は、ラーメン屋で有名な「天下一品」のお話である。
”天下一品”は賛否両論か?
ラーメン次郎にも並ぶのではという勢いで固定ファンが多いラーメン屋、それが「天下一品」である。
「全世界で最も優れたラーメンを提供する」というような名前のラーメン屋なので、ずいぶんと大きく出ているが、ラーメン系のネーミングは強気なことも数多いのでその点は気にしなくていいのかもしれない。無敵屋だとか、極み〇〇だとか、そんなのを目にするだろう。
で、その天下一品のラーメンはどんなものなのかというと、とにかく濃い!
そこが人気なのだが、とにかく本当に濃厚なのだ。いや、濃厚とはまた何か違う感覚がある濃さだ。
だが、それが病みつきになるということで多くの支持者がいる、関西は京都発祥のラーメンチェーン店である。「天一」という略称で親しまれる。
…が!
一方で苦手な人も結構見かける。
実際、私の周りでも「一番おすすめのラーメン屋? 天下一品だね」という人もいれば、「天下一品、あれは勘弁してくれ。ありゃ油の層だ。沼だ」という人もいる。
では私はどうかというと…
下手したら炎上するが、どちらかというと後者に近い立場だ。当ブログのゲストライター三文享楽なる人物も比較的近い立場だったはずだ(勝手に巻き込む)。我々はどちらもこってりは好きな方である。
ただ、天下一品の”こってり”は求めているものとはまた違う方向性に思えてならないのである。
なーんてことを思ったのが今から8年ほど前、初めて天下一品を食べた時のことである。
今はどうか
だが、今ならもしかすると違う感想を抱くのでは?
ブログでグルメ記事を大量に書き始めてしばらく経つ今。昔と味覚も考え方も変わっているかも知れない。そう思い、私はひさかたぶりに行ってきたのだ。
天下一品に。
こってりが恋しくなるような夜に行ってきた。
一人、行ってきた。カウンターだ。
こってりラーメン現る
実はこの店、あっさりもあるのだが、天下一品であっさりを頼むのは次郎で少な目を頼むようなもので、過激派たちの怒りを買いかねない。それに、実際問題あっさりならほかの店で食えばいいので、ここではこってりを頼む。
そうでないと今回は特に意味がない。
↑メニュー自体は豊富で、この中には「味かさね」というものや、「あっさり」などもある。
ということで、”こってり”を注文し、ラーメンが来た。
こってりラーメン 720円(税込)
まあ、写真を見た時点でわかるだろうが、こってりだ。まぎれもないこってりである。筆者的には一般的な濃厚ラーメン、こってりラーメンとは見た目でもすでに少し違う気がするが、それがよさでもあるのだろう。
昔はこれが苦手だったが、今はどうか…それを試すために入ったようなものである。
まずはスープを一口。
…
やはり濃厚!
濃厚豚骨? いや、それは違う。
とろみがあるというよりは、何かざらつきがあるような、固体的な濃厚さ。なおかつ、ぬるっとした感触も少しある。まあ、世の食レポをみると「とろみがいい」と書いてあったりはするのだが…。ねっとりが近いかも知れない。
逆に、背脂的なしつこさはないので飲みやすいといえば飲みやすい。背脂のようなジャンキーかつワイルドな濃厚さとはやはり違うのだ。まさに”豚骨”といった感じの濃さ・食感ともいえる。もしかすると本来これこそが純粋な豚骨なのかもしれない。
…なーんて思ったあなたは大間違い。
天下一品は濃厚でとろみを超えて固形なくらいにとろみがあるが、これは鶏なのだ。豚ではない。
なるほど納得、同じく鶏系で私が好きなラーメン屋である「鶏の穴」もたしかにこの手のとろみがある! それが強くなりまくったら確かにこうかも知れない。こう合点がいった。
さらに、意外にもスープは野菜がたくさん入っているのだ。なので、案外ヘルシーなのかも知れない。鶏と野菜が煮詰まりまくったスープと思うと、なんとなく想像がついてきた気はする。
なんにせよ、この時点ではうまいとも思うし、やっぱりちょっと違うという感覚もある。まだわからない。
そして、麺。これがまた濃厚なスープを非常によく吸い込み、存分にスープを味わえるような麺になっている。相性のいい…というか、このラーメンの個性を存分に引き出している麺だ。
これもやはり濃厚で絡んでおいしい。のだが、麺が糊でくっついているようなくらいのこってりさで、なんというか…けっこう強いのだ。
グルメブログ等で「後味はすっきり!」と書いている人も見かけるが、私としては帰宅後も少し残っている感じがする程度には、強い味だと思う。塩っ気もまあまあある。
チャーシューは単体で見ると少しかわいたような感じだが、こってりスープがそれを覆うような感じでオブラートになっている。こちらは個人的には普通。その他、メンマや薬味はとくにこだわりは感じない、普通のものだったが、それゆえにこってりスープが目立つとも思った。
感想
全部食べて思ったことは、美味しいと思わなくもないけど、やっぱり濃すぎて好きではない。というものだった。以前よりは味の多様性に寛容にはなったのかも知れない。
まとめ
というわけで、時が経っても私の食の好みはそこまで変わっていなかったようだ、ということがわかった。
しかし、こんな意見もある。
僕は天下一品のラーメンを初めて食べた時は、「天下一品はまずい」と感じました。
しかし、職場の先輩に天下一品が好きな先輩がいて、何度か一緒に行くたびに天下一品の良さがわかるようになってきました。
天下一品の良さを理解するには、人によっては何度か行かないと理解できないことがあると思います。一度行ってみて、まずいと感じた方はもう一度行ってみると面白いかもしれません。
引用:天下一品で「こってりラーメンとチャーハン」を食べてきた|俺の食べログ
この手の何度か行くとはまる…というのは単に中毒性のある脂やら添加物のせいなのでは?と正直思ってしまうこともあるが、確かに複雑な味わいのものなんかは何度も食べてやっと”わかる”ようなこともある気はする。
音楽でもそう。最初は地味でなにこれ?と思っていても、どんどん良さが深く染み込んでくることがある。何度も聞くと飽きる曲もあれば、聞けば聞くほど聞きたくなる曲がある。そういう感覚なのかも知れない。
私はそこまで努力をして天下一品を大好きになっても仕方ない気がするので、気が向いたときにまた行くくらいにするが…
また、こんな情報も。
それもそのはず、天下一品のラーメンの基本的な考え方は「10人中9人にまずいと言われても、1人めちゃくちゃ美味しいと言ってくれるようなラーメンを作りたい!」なのです。
引用:
天下一品の日なので色々な体験レポートや歴史や様々な豆知識をご紹介!|チーの色々情報サイト(2017/11現在リンク切れ)
なるほど。癖・個性が強ければ強いほど、それが刺さる層には深く刺さる。それはそうかも知れない。
その方向性が「超こってり」というのは、味覚的にいいのかというと謎ではあるが、味覚の正解なんかあるの?と問い詰められれば最後は「身体にいいかどうか?」くらいしか納得のいきそうな答えは今は出ない。そして、身体にいいものは苦いことも多いので、やはり真理とはいえなそうだ。
とはいえ
とはいえ、「おいしいかも」と思う瞬間はあるし、「確かにハマる人もいてもおかしくないな」とは思う味ではあった。ただ、私は特別好きかというと、どちらかというと誘われなければ入らないな、という結論は以前と同じだったのも事実。
この差は体と油の相性の問題なのか、味覚の問題なのか、食感の好みの問題なのか…色々と考えながらも私はこれからもまた探すのであった。
自分にとっての天下一品を。
↓味噌系のこってりは好物。お勧めのラーメン屋、花田。
↓あっさりは見た目の清涼感が芸術品的で、そこもいい。
↓お試しからハマる…そんな人生もあるだろう。