江戸時代、狂歌というものがありました。
これは社会諷刺や皮肉をこめて、五・七・五・七・七という決められた音の中で構成された短歌です。押韻や過去の名歌を諧謔化する本歌取りといった手法で、歌に深みをつけました。
平成時代、ラップというものがありました。
これは社会諷刺や皮肉をこめて、流れるビートという音の中でカッチリ構成していく主義主張です。押韻や過去のラッパーのパンチラインを踏襲して、歌に深みをつけました。
平安時代、歌合(うたあわせ)というものがありました。
これは歌人を二手に分け、相手の歌に対して即興で歌を返し、その読んだ歌の優劣をジャッジして競い合うバトルです。
平成時代、フリースタイルバトルというものがありました。
これはラッパー同士がラップで主義主張をぶつけあい、相手のラップに対して、即興でアンサーラップを返し、その内容、押韻、リズムの良さでラップの優劣をジャッジして競い合うバトルです。
ええ、平成時代のこの文化、本当にすごいと思います。
ヒップホップヘッズ三文です。
連日連夜、私が即興ラップを聴き続けるのは昨今のMCバトルがあまりに秀逸で人生観を変えられる感動があるからに他なりません。以前のヒップホップ基礎記事から少しもヒップホップ熱が冷めることはありません。
さあて、では、どのラッパーの即興バトルから見ていくべきでしょうか。
さて、戦極 mc battle、B-BOY PARK、サイファーなどフリースタイルラップのバトルは数多くありますが、これから即興ラップバトルに踏み入れる方ならば、知っとくべきラッパーたちを列挙します。
三文が最もリスペクトするラッパーたち
R指定
私が即興ラップにどっぷりはまってしまったのは彼の影響です。まず彼の即興ラップを聴いて自分に合わないと思ったなら、おそらく即興ラップに向いてない方です。ここ最近はテレビ出演もどんどん増えていますが、彼の昔からのラップバトルは全て視聴すべきです。
ライム、フロー、即興のアンサー力、歌詞のドープ具合どれをとっても随一です。語彙とライムの量には驚嘆させられるものがあり、またそれを使いこなす世界観も完成したアーティストでなければなしえないものだと思います。
関西出身です。
チプルソ
彼もまた神がかったスキルです。そして、関西出身です。
テレビであまり見たことはないのですが、それはもう彼のもつ言葉の鋭さにあるでしょう。コンプラを気にしない彼の言葉選び、ドープな世界観と製造されたライムはこれまた一見しなければなりません。
DOTAMA
栃木が生んだスーパースターだと思っています。彼のもつ狂気も並大抵のものではないでしょう。ねちっこく相手のボロを攻めていく彼の独特のスタイル、笑いのセンスも踏まえた究極の毒舌、いやらしさを武装したうえでのスーツ的な姿とマジメな風貌、謙虚さ。これはDOTAMAというブランドでしょう。
TK da 黒ぶち
そして、埼玉春日部のレペゼン、TK da 黒ぶち。最初のR指定ご紹介の際に、最初にハマったラッパーと書きましたが、一日何十回と聴いていたのが、R指定とTK da 黒ぶちのバトルでした。ライムに反映される彼の世界観は社会の不満とラップに対する愛であり、ストイックにスキルを磨く彼のアーティストとしての姿勢を尊敬してしまいます。
上記の他の二人ともバチバチのバトルをしているので、是非。
GADORO
いわずもがなのスキルです。私がR指定を初めて聴いて以来、同じ衝撃を味あわされたのは彼です。他の数多のラッパーたちを聴き、その上でこの衝撃を受けたのだから彼のスキルは常軌を逸しています。彼もまた、ライム、フロー、即興のアンサー力、歌詞のドープ具合どれをとっても随一でどうやってこのスキルを磨けたのかも不思議です。
宮崎高鍋レぺゼンということですが、彼が一人いるだけで、九州ってすげえなと思わせるほどのスキルをもっていると思います。
フリースタイルを語るならば知らなければならないラッパーたち
普平太
安定したラップを量産し、賞レースでも成績を残し、その不動の地位まで登りつめた彼。その後全国をまわり、司会業としても不動の立ち位置を確立した彼。フリースタイルダンジョンの審査員の位置にまでいて、ラップというものを全ての方面から知り尽くしているラッパーです。
KEN THE 390
同じくフリースタイルダンジョンの審査員すら務める人気者。聴いていても分かる彼の優しさとラッパーらしいドープさ。そして、ポップと言われながらも確実にヒップホッパーとして活動している彼のスタイルは見習うべきことも多いです。MOVITS!の曲に彼の声が出てきた時には、やはり感動しました。
CIMA
やはり、大阪すげえです。彼のラッパーらしい声とリリック、そして動き。これがホンモノのヒップホッパーという様相です。一二三屋の店員ということで、よく語っていますが他にHIDADDYなど猛者そろいです。ラップの基礎として彼も知らなければならないでしょう。
サイプレス上野
このラインナップに入れていいのか迷いました。だって、彼のフリースタイルを見るよりも前にCDで彼の曲が大好きだったのですから。『担当者不在』という曲に彼の世界観と狂気を感じ音源が心地よかったのですが、もうフリースタイルもこんな上手いなら何も言えません。横浜レペゼンです。最近では、フリースタイルダンジョンでモンスターとして活躍しています。
ちなみに、同じくフリースタイルダンジョンでモンスターとして活躍している漢a.k.a.GAMIもこのラインナップに入れていいのか迷いますが、知らなければならないでしょう。
SIMON JAP
バトルといえば、このラッパー。数々の名シーンにこのラッパーありです。この外見の怖さで数々の経験があるのに、多くのラップバトルに参加し続けた戦士で、ラップバトルといえばいつもSIMON JAPが輝いていたと思います。最近はフリースタイルに出なくなったようですが、昔のバトルはチェックしておくべきです。
特に、Mr.Smileの名を広めることになったバトルは必見です。
ACE
見た目が外国人というのは気にしないで見て、まず、すげえです。よくこれほどまでの情報量とラップに還元していく技術があるなと感動させられます。ブラジル系らしいのですが、歌詞のドープさも音に乗せる技術も、お笑い的な要素も素晴らしいスキルです。彼も知らなければ最近のラップバトルについて語れないでしょう。
やはり、知っておくべきラッパーたち
CICHO CARLITO
琉球レぺゼン、独特のフロー、ねちっこいリズムはチェックすべし。
GOLBY
おしゃれなラップ、深くてライムも上手い。
mol53
宮崎 レぺゼン、ヒップホッパーらしさを感じる。
黄猿
独特です。歌い方が上手いのでしょうか。流れる歌い方と着実に踏んでくるライム。
鎮座dopeness
見てきた中で、最も異端だと思います。なんといっても歌詞のドープさと自由さ。
ガッティ
茨城レぺゼン。酒を飲みながらの返しの上手さ、見ていて楽しくなります。
田中光
リズムと言えば、彼です。
PONY
彼もまた音との融合が素晴らしいのです。
焚巻
フリースタイルダンジョンで般若を引きずりだしたラッパー、上手いです。
GIL
男らしい固いスタイルの頂点。
ハハノシキュウ
これまた異端。独特の声とオタクを全面に押し出した不気味さです。
ドイケン
大阪の技巧派ラッパー、音の乗り方と韻の踏み方上手いです。
呂布カルマ
オーラがまずとびぬけている。そして、見た目とギャップある固いライムが安定。
NAIKA MC
レぺゼン群馬、声のデカさでバイブスがぴか一。自由な韻の踏み方も余裕を感じられる戦い方。
KZ
大阪弁をふんだんに使い、着実に相手の弱点をアンサーするラップバトルのプロ。
おそらくこの辺りまでは知らなければいけないレベルです。
さらに一覧です。
高校生ラップからスゴかった
- ニガリa.k.a赤い稲妻
- HIYADAM
- Ruda α
- T-PABLOW
女性ラッパー
- 萌黄
- NAOMY
- CHARLES
- あっこゴリラ
さてさて、
書いても書いても止まらずに、大変でした。もうラップバトルが好きすぎて、ここに列挙しきれないのです。とめどないのです。列挙しきれなかったけど、素晴らしいラッパーさんは数多くいます。
大物の見落としもあるからもしれませんが、まずはこの記事のラッパーのバトルを見てからフリースタイルというものを楽しめると思います。