どうも、ケーキを等分するのは得意ですが、ピザを等分するのは苦手な三文です。
もちろん、ケーキの形状がとか、のっているイチゴが原因とか、ではありません。問題はピザにあるのです。なんというか、
自分のだけ大きくしちゃうんですよねえ。
そりゃ、ケーキも人数割り分は食べますよ。でも、ピザとなると、意地汚く少しでも多く…
改めまして、甘いものはそこそこ、油物は大好物、三文享楽です。
お知らせ
ということで、分割作業をしてみました。
今まで、長編小説を少しずつ公開していましたが、読んでくださっている方々に、これ一体どれだけの長さなんだよという不安や怒りを抱かせてしまっていたことと存じます。
そこで、全○回がふさわしい小説か、一回の記事にどれほどの字数が適当かを考え、分割作業をさせていただきました。
その結果!
この長編小説『歴史の海 鴻巣店編』は全15回の小説とさせていただくこととなりました。
さ、ら、に!
次の次、第7回目以降、字数を2倍に増やしてみます。
そうですよ、ランナーズハイってやつですよ。
回数的な折り返し地点、ええ、調子が乗ってきた事実上のアクセル全開地点、楽しくなって楽しくなって、単なる半分とも違って、ハイテンション、今までの道のりもなんその、こんな三文小説、楽しいを通り越して、低俗、余裕綽々で読み飛ばしちゃう、まさに三文小説、ゲハゲハゲハ!!
ってな、具合です。
さあて、お楽しみくだしゃーい
前回までの内容⇒『歴史の海 鴻巣店編』1、『歴史の海 鴻巣店編』2、『歴史の海 鴻巣店編』3、『歴史の海 鴻巣店編』4
この長編小説は全15回の連載予定でございます。
『歴史の海 鴻巣店編』5
5
「つまり何だ。このビルの中には古の人物もいるということか?」
「そうです。この五階建てのビルの中には古今東西、歴史上に名を残した全ての人物がいます。その歴史に名を残したかつての人物とも共に戦うんです」
どうやら、その人物が生きた時代からかけ離れ、その人物の生前の固有名詞を特定するものでなければ記憶には残っているらしいのだ。
「こいは面白か。おいの示現流が何処まで通ずるか良か機会じゃ」
「でも、ちょっと疑問が」
「山岡さん、そのげぇむとやらから抜けるというのは無しぜよ」
「違う違う。先程の弓矢の使い手があの鎌倉の名将、那須与一であったならば、戦いの方法が違う。鎌倉という時代、武士はそれぞれ己の生まれ、家、名前、を重んずる。詰まり鎌倉時代の武将は戦う前には長々と自己紹介をしたという。あのような不意打ちをするはずなど無い」
竜哉は多少ひるんだ。鉄舟の言わんとするところももっともである。鎌倉時代を生きた本当の那須与一が長々と自己紹介をしていたならばこの那須与一は全くの別人なのだ。しかし、このゲームの根本に戻れば説明は付く。これはゲームなのだ。
「これはゲームなんです。その人々は自己の剣の才、頭のキレ味、性格はそのままですが、かつて自分が何処に住み、何をしていたのかを思い出せません。常識、風俗のいくつかもそれぞれはところどころ忘却し、この世界で新たな常識が生まれます。我々は新たな常識の中で生きるしかない。郷に入っては郷に従えなんですっ!」
何十分ぶりかの静寂が戻った。
誰も何も言わなくなったがこうしていては先程のようにいつ襲われるかも分からない。事実、こうしているときにも何処で誰が斬り合っているかも分からない。
「敵が分からなければ我々に勝利はありません。偵察に行きましょう」
竜哉は思い切って言った。言い終えた後の震えは秋になりゆく気候のせいではなく戦いに向かう前の慄き、武者震いというものであろう。
「大将はここに残るのが良か。偵察にはおいが行きもそう」
「俺も行く」
弥兵衛と一誠が言った。
自分も行きたいのは確かだが、途中で死ねば元も子もない。ゲームはそこで終了だ。
隊を二つに分ける必要がある。
「長次郎サァはどぎゃんしもすか?」
「お、俺は……」
鋭い目がうつむき、少し震えているようであった。
「無理しないで下さい」
言ってしまってから、後悔した。
顔を上げ、目が少し吊りあがっている。
「行く。俺も偵察に行ってくる。だから、大将は何もせずここで待っていればいい!」
長次郎は徐々に声高になり、最後はそれこそ自棄のやんぱちに言った。
結局、竜哉と鉄舟が残り、弥兵衛、一誠、長次郎が立つこととなった。
――残り、二日と二十時間である。
6
偵察隊一行は三階の本陣を出て事務的で感情の無い廊下に出た。
身を隠しながら出たが、誰も隠れてはいなかった。
「誰もいなかごはんど」
「下に降りるのは階段を使うのか?」
一誠は非常用と書かれた看板の向こうに木造でなくコンクリート造りのなだらかな階段というものを見つけた。横文字での非常用は「用常非」として認識したし、昔ながらのはしごのように急激な階段を想像していたため、コンクリート造りの下に行く手段を見つけたのはまったくの偶然であった。
長次郎は△や▽のなぞのマークが横に付いた両開きの扉を見つけたが、エレベーターの使い方を知る由もなく渋々、弥兵衛の後を付いていった。
「二階に本陣を構えているものがいたらどうする?」
一誠が二・五階に位置する踊り場で後ろを振り返った。
「とりあえず……」
「斬りもそう。己らで片付けもそう」
長次郎の言葉は弥兵衛にかき消された。
弥兵衛は左手で自分の刀唾を下に押し出し、いつでも抜刀し斬りかかる準備が出来ていることをアピールした。
「ちょっ、ちょっと待て。作戦を考えるべきぜよ」
「なら、長次郎サァは待っちればよかおいと一誠サァが片付けもす」
同意を示したつもりは無かった一誠だったが、あえて何も言わなかった。
「敵が四人だったら?四人でもおはんら二人で行けるがか?」
「行きもそ。戦って形勢不利なら退けばよか」
「退く? 逃げるがか? わしらは武士ぜよ」
「無駄な戦い避けるのが」
「ちょっといいか」一誠が止める。「今、聞き覚えのある声がした」
弥兵衛と長次郎は一誠に向き直る。
「何だ……そうだ、女だ。女の声がした」
「冗談はよか。女子がこんなとこにいるわけ無かろう」
「一誠サァは好色じゃったのか?」
「違う。本当なんだ。確か……大将は古今東西歴史上の人物は誰でもいると言っていた」
「そいじゃあ……小野小町や清少納言、もしかしたら推古天皇もいるかもしれないと?」
「可能性はある」
一瞬、二、五階の踊り場にコンクリート造り特有の静寂が着たが、破ったのは弥兵衛の笑い声であった。
「一誠サァの心遣いは分かぃもした。長次郎サァ、こいからは喧嘩せずにいこう」
「は?」
「一誠サァは自らの好色になるのを背負って、笑わせてくれたち」
「そうだったのか」
「いや、違う。本当に……」
「よか、よか。ここにいたら袋のねずみじゃき。早いとこ二階に戻りもそ」
一行は残り半分の階段を下に向かった。